第3話 小学4年の夏
そういえば。
僕は目の前のふわふわ浮いてる目玉のガンリを見ながら思い出した。
小学生の頃、僕は空ばかり見上げていた。
サッカーでゴール決めた時も
学校の登下校の時も空を見上げた。
その頃流行っていたUFOでもいるのかと
期待もあったが。
何かあるかもしれない。
いつも自分だけのワクワクの期待で見上げていた。
そこにはいつもふわふわ浮かぶ雲があった。
形はコロコロ変わる。
そんな雲を見るのも楽しかった。
そんなある日、単純だ。友達とケンカした。
土曜日の遊びの約束をしてたが、急に別の友達と出かけることになったと僕との約束を取り消しにされた。
あんなに仲が良かったのにと。かなりへこんだ。
友達のことを嫌いになった。
あとで聞いたら、別の友達との遊びは嘘で。
ほんとは親に塾に入れと連れていかれたらしい。
友達は塾のことを僕に言うのが恥ずかしかったらしい。
しかし、その時の僕は、そのことを知らない。
1人での学校帰り。むしゃくしゃしながら
空を見た。
急に雲の先端が女の子の形に変化。
目玉が見えた。
『見つけた。』
『天空の姫ガンリよ。わたしと目が合うとは。一億万年に1人か。』
僕の脳内に言葉が勝手に入り込んできた。
夕焼けに浮かぶ、ふわふわのの雲。
普通の小学生は怖がるんだろが、いつも見慣れた雲。
こんな不思議なことがいつか起こるんじゃないかと、ずっと待っていたような。
”チャンスは逃さない。迷うんだったら行動する。何もしないで後悔するより行動して失敗した方がいいさ。”前に読んだマンガの主人公のセリフだ。
「そうだな。そうするよ。」
僕は空を高く見上げた。そして思い切って雲の目玉に話しかけた。
「友だちとケンカした。
助けてくれ。」
「嫌だ。」
「なんだ即答か。冷たいな。」
「助ける理由がない。」
「確かに。そうだな。僕は毎日、空を見上げていたからさ。勝手に雲は仲間だと思っていただけだ。」
大人ぶるつもりはなかったが小4の僕にとっては精一杯。天空の雲の目玉と僕は対等に話した。
正直、コワくもないし、雲にも言ったが、
毎日見てたから、仲間?と言うより
心地いい友達感覚でいた。
でもその頃の僕は、子供過ぎて雲が何を考えているかまで、察することはできなかった。
友達だと思っていたのは僕だけで
気持ちの一方通行だった。
”相手があること。”
雲の目玉でそんなことを学んだなんて、今更だけど笑えるけど、
そうだ。すべて思い出したぞ。僕は確かに天空の姫ガンリと出会っていた。
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