音のしない部屋
小亀令子
音のしない部屋
遠くからサイレンが聞こえる朝の、寂しがるのが下手になること
湯を沸かすひとりであればあるほどに味方が増えるような心地で
転入の手続きは済んでいるはずの孤島のような角部屋にいる
しばらくはケースのなかにある楽器 息を潜めたまじないとして
シャットダウンするように鍵をかけるのに部屋には部屋の一日がある
アスファルト並んで歩く二羽の鳥 恐れることはなくゆっくりと
音のしない部屋がゆたかな相棒でわたしはわたしに退屈しない
おそるおそる窓を開ければ平凡なベージュのカーテンがふくらんだ
呼ぶ声に応える春は音楽を大人数でやりたい季節
いい音と褒められ音の通り道としてよろこぶ いってらっしゃい
音のしない部屋 小亀令子 @0kkgm
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