第29話 ヤンデレによって混沌と化した朝食
「「…………」」
艶やかな黒髪ロングの幼馴染・
そのお互いにデカい胸を、相撲のぶつかり稽古くらい何回も押し付け合いながら睨み合って謎の火花を散らす。
い、一体、何が起こってやがる……。
俺と結珠奈は階段を降りながら身を隠し、ひょっこり顔だけ出してリビングの様子を伺う。
「結珠奈、お前が行ってどうにかできないか?」
「いや、兄さんが止めに入った方が」
「いやいや、俺が行ったらさらにややこしいことになるだろ!」
「いやいやいや、あたし行きたくないし!」
「いやいやいやいや、俺の方が行きたくないんだが!」
「「二人ともさっさと出て来なさい」」
「「ひぃっ!」」
リビングから二人の声と視線が重なり、俺たちの方へと向けられていた。
俺たちは渋々、重い足取りでリビングにいる二人の元へと移動する。
なんでこんなことに……はぁ。
結珠奈は他人顔で、そのままキッチンへ朝食を取りに行ってしまう。
いや、置いてくなよ……。
「青斗くん、おはよう。ところでこのわたしよりおっぱいの小さくて可哀想な方は? なんか青斗くんの家族を自称しているのだけど?」
「おはよ青斗、ところでこっちの無駄に胸ばかり大きくて逆に男子から嫌われそうな方は? なんか青斗の姉を自称してるんだけど?」
二人は初対面とは思えないほどの舌戦を繰り広げており、もはやフリースタイルのラップバトルにも似た何かを感じる。
「私は美乳で普通に巨乳だから。それに青斗は爆乳グラドルより美乳グラドル派なの。お姉ちゃんを自称してるのに青斗の好みも知らないなんてまだまだね」
「へぇ、胸が小さいとそんなことでピキるくらい心まで小さくなるなんて大変ですねぇ。あと家族を自称してる不審者に色々言われたくないです♡」
お互いのディスり合いが止まる気配がない。
マジでなんでこんなことになってんだよ!!
「お、お前らな! いい加減そのよく分からない喧嘩やめろ!」
俺はすぐに二人の間に入り、喧嘩を止めようと試みる。
すると二人は両サイドから今度は俺にその巨乳を押し当てて来てって、おい!
「落ち着け! そ、そもそもなんでこんなことになってるんだ!」
俺は二人を剥がすと、一定の距離を保ちながら話を進めることに。
「そこの自称姉から喧嘩をふっかけてきたの。私は青斗の家族みたいな存在だって、何度も説明してるのに」
「お前は幼馴染だ!」
「喧嘩をふっかけてきたのはそこの自称家族さんの方からだもん! わたしはただ、青斗くんのお姉ちゃんとして説明を!」
「お前は義妹だ! もうややこしいなお前ら!」
ツッコミが追いつかないレベルでお互いにヤバい。
「もう一度聞くけど、何があってこんなことになったんだよ」
俺は呆れながらも、もう一度、何が起きたのか訊ねる。
「実はね、今朝お母さんが庭で日課の乾布摩擦をしていたら」
「ん? ちょ、ちょっと待て! 菜乃花さんが乾布摩擦だと!?」
「う、うん」
あのグラマラスボディが庭で乾布摩擦なんかしてたら、変態と警察が両方出動する事態になるだろ!!
「ちゃんと晒を巻いてるよ?」
「それなら……って、良くないが!」
「それでね、庭でお母さんが乾布摩擦してたら、朝5時くらいに玄関の方で人影が見えたんだって。新聞の配達かと思って駆けつけたら、この人がいたらしくて」
紅葉は春香の方を指差す。
な、なるほど……確かに春香は昔から早起きで、いつも俺を起こしに来てくれてたっけな。
「だって青斗が、前みたいにいつでも毎日何時からでも遊びに来ていいって言ってたから」
毎日? 何時からでも? なんか増えてるような……。
「とにかく! 私は本当の家族じゃないけど、青斗の幼馴染で水瀬春香! ほら、ちゃんとした自己紹介したんだからあなたもしてよ!」
「……わ、わたしは青斗くんのおね……ぎ、義妹で、糸原紅葉です」
お互いに正しいポジションから自己紹介を済ませ、これにて一件落着……かと思われたが。
「糸原? え、ちょっと待って……そっちにいる結珠奈さん?」
結珠奈は知らん顔で平然と食卓で朝食を摂っていたが、急に春香から話を振られてビクッと反応する。
「あなたも名乗ってみて」
「え? あたし? 糸原結珠奈ですけど……」
春香は何やら難しい顔をしていたが、何かに気がつくと急に目の色を変える。
「間違っていたら申し訳ないのだけど、もしかしてあなたたち……戸籍上では青斗の妹に当たらないから青斗と結婚するのが可能なの?」
「「「……っ!」」」
春香の指摘によって、完全に空気が凍りつく。
さすが春香……まさかこの一瞬でそのことに気がつくなんて。
「おはよぉございま……って、え? あっ、あなた、誰ですか!?」
さらに杏子も起きてくる。
もう、どこから手をつければいいのやら……。
朝食の前なのに、胃が痛くなる俺だった。
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