第28話 ラッキースケベは突然に♡


 ——翌朝


「僕が悲しいとき〜、傷ついていたのは〜、僕だけじゃなかった〜!」


 カーテンの奥からジャンジャンと弦を掻き鳴らすギターのアンプラグド音と、なんとなく俺と春香の関係性を思わせるような歌詞の歌が聞こえてくる。


 結珠奈め……朝から元気だな。


 俺は眠たい目を擦りながら身体を起こすと、隣にある結珠奈のスペースへ繋がるカーテンを開ける。


「おい結珠奈、好き放題弾いていいとは言ったが、朝から弾くのは流石に……って!」


 カーテンを開けて注意しようと思った俺だったが、俺がカーテンを開いた瞬間、結珠奈は椅子に座りながら上下姿でギターを弾いていたのだ。


「にっ、兄さんっ!」


 ほんのり透き通った水色レースの可愛い下着は、普段ギャルっぽい結珠奈の見た目に反して落ち着いた印象を醸す色合いでありながら、結珠奈の胸元があまりにも大きくて成熟しているため今にもはち切れそうになっており、そこには可憐さと艶めきが同居していた。


 お、おお、生おっぱ?? えっっっ!!


「いつまでみてんだこらっ!」


 結珠奈はギターのピックを手裏剣のように投げ続けてきた。

 俺はそれを避け、自分の部屋へと避難する。


 ま、まさか下着姿で弾いてるなんて思わないだろ! 普通!


「兄さんのエロ太郎! 変態! シスコン! ドスケベ!」


 カーテンの奥から容赦ない罵声が飛んでくる。

 俺は完全に被害者なんだが……。


「ご、ごめんっ! 違くて! 朝からギターはさすがに五月蝿いから注意をしようと思って!」

「あっ……それは、ごめん」


 俺がカーテンに向かって事情を説明すると、以外とすんなり誤解が解けたのか、結珠奈は謝罪してくる。


 結珠奈はちゃんと事情を話せば理解してくれるし、意地張らずに謝罪もする聞き分けが良い子、なんだが……その割によく分からない行動が多いんだよな。曲もよく分からないし。


 そこからしばらくして、制服を着た結珠奈がひょこっと俺の部屋に入ってきた。


「兄さん、さっきはごめん。なんかインスピレーションが湧いて来て、朝から弾きたくなっちゃって」

「いやいや、別に俺は怒ってないよ。俺の方こそなんも言わずにカーテン開けてごめんな? あと、下着姿も見ちゃって……ごめん。ほんと」


 結珠奈の謝罪に上乗せするように、俺も下着を見てしまったことを陳謝する。


「下着見られたのは確かに驚いたけどさ、まあ、お互いさまってことで、今回は許したげるよ。ラッキーだね、兄さんっ」

「ラッキーって、お前なぁ」


 まあ実際、ラッキースケベだったことには間違いない。

 ただ、三姉妹の下着を見るのは初めてではないことは黙っておこう……。


「そんで、ちなみになんだけど。あたしの下着、どうだった?」

「は、はあ? な、なんてこと聞いてんだよ!」

「兄さんみたいな男子から見たらどうなのかなって、あたしも知りたいし」


 どんな好奇心だよ、それ。


「そんでそんで、どうなん?」

「それは……まあ、その。エロ可愛いかった……かな」

「は? え、エロって……兄さんの、えっち」


 なんか余計に気まずい空気になったんだが!


「ま、昨日のギターのお礼ってことで。良かったね、のエロ可愛い下着見れて♡」

「か、揶揄うな!」

「あははっ、兄さんの顔あかーい」

「うるさい!」


 結珠奈も紅葉と同じくらい俺の扱いに慣れて来たのか、すぐ揶揄ってくる。

 はぁ……まあ、俺がこんなだから仕方ないか。


「ん? てかもう7時だよね?」

「あ、ああ。俺も早く着替えないと」

「いや、そうじゃなくてさ」

「え?」


 結珠奈は部屋のドアの方をじっと見つめる。


「紅葉っていつもならこの時間に兄さんのこと起こしにくるじゃん。時間に厳しい紅葉が遅れるなんておかしいなって思ってさ」

「それは……確かに」


 紅葉はいつも7時ちょうどにエプロンを着けながらお玉を片手に俺を起こしに来てくれる。


 ただ、今日はそれがない……どうしたんだろ。


「あたし、先に下行って様子見てくる」

「ま、待て! 俺も着替え後にして一緒に行くよ」


 心配になった俺と結珠奈は、少し焦り気味に階段を下って一階へ、すると——。


「あなた……青斗のなんなの?」

「お姉ちゃんです♡ あなたこそ、青斗くんのなんなんですか?」

「私は青斗と家族みたいな関係」

「家族? へぇ、でもわたしはちゃんとした家族なんですけどねー」

「なに、喧嘩売ってるの?」


 一階のリビングでは、自称お姉ちゃんの義妹と、自称家族の幼馴染の大怪獣バトルが勃発していたのだった。


 なんで朝からこんなことになってんだよ!!


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