第49話 神獣の居場所わかっちゃったんだがぁ?

 よし、ここなら誰にも邪魔されないねぇ。

 ますはスキルで街の地図を書き起こして……。


「ああ、やっぱりねぇ」


 こういう魔力回路を永続的に作動させるなら、魔力の通り道だけじゃなくて動力源が必要だ。

 魔法の場合は魔力そのものを回路の形にするから問題ないけど、この街のような魔道具の類いだと、物理的に作った道に魔力を通すことになるからねぇ。


 その魔力の供給源がないとおかしいんだけど、街規模の回路を動かせるような大規模な魔力の供給源が設置されているような設備が見当たらない。


 この辺で手に入る魔石で賄うとしたら、かなり大きな建物が必要になるのに、回路のそれらしい位置には小さな商店や民家しかないんだよねぇ。


 で、他に動力源を置くとしたら、回路の中央。学園がある位置になる。

 

 ただ、学園には学園の回路があるし、あそこに蓄えてる魔石の量じゃあ、街全体の回路を作動させるにはどう考えても足りない。

 だから選択肢から外してたんだけどねぇ。


 でも、もし、捕らえた神獣を動力源として利用してたとしたら?

 

 こうやって描き起こしてみると、たしかに学園に繋がる導線がある。

 で、この学園部分に教授のお土産の図面を書き写すと……。


「ビンゴ、かなぁ」


 ちゃんと二つの回路が繋がったよ。


 効果としては独立してるから、動力源を共有した二つの魔力回路を繋げてある感じだねぇ。

 とすると、あの魔石保管庫のところに神獣が捕らわれてることになるんだけど、生徒が出入りできる場所に置いておくわけないよねぇ?


 つまり、あの魔石保管庫に回路的に繋がる場所にいるってことなんだけど……。


「上か、下か……」


 上に繋がってるのは、建物自体の防護結界を生み出す回路でしかないねぇ。

 じゃあ、この図面にない部分。


「下、かぁ……」


 これ、どうやって行こうかねぇ?

 まさか学園内部に侵入して大穴を開けるってわけにはいかないし……。


「まぁ、掘ればいいかぁ」


 外からなら、ちょうど良い場所があるしねぇ。



 リリアを寮に送り届けて、街の外の家に戻り、夜。さぁ、作戦決行だねぇ。


「にゃぁ?」

「この格好かい? これは伝統的な探検家の格好さ」

「んにゃぁ!」


 え、コペンも着たいの?

 まぁ、スキルでベースは一瞬だし、ほとんど手作業で猫用に調整するだけだから作って上げようかねぇ?


 ちょちょいのちょいっと。


「んにゃ!」

「うん、なかなか似合ってるねぇ」


 探検家セットの白猫、可愛くないわけないよねぇ?

 何枚か写真撮っておこうか?


「にゃ」

「ああ、そうだね、行こうか」


 というわけで、ダイヤモンドのつるはしを取り出しましてっと。

 方向は、こっちだねぇ。


 よし、じゃんじゃん掘っていこう。出た土はストレージ行き。


「おー、サクサクだねぇ。さすが効率強化のエンチャント」


 本当は採掘速度増加って名前だったと思うけどねぇ。

 別のメジャーゲームでの名称がなぜか定着するのは、あるあるだよなぁ。


 ざっざっざっと。これなら深夜になるころには辿り着けそうだ。

 腰も痛くない。


 ビバ、ゲームキャラスペック、ってところかねぇ?


「おや、手伝ってくれるのかい?」

「にゃぁ」

「んにゃ!」

「助かるよぉ」


 猫の手も借りたいって言うけど、神獣の手なら百人力だねぇ。

 おかげで小走りくらいのスピードで掘り進められてる。これじゃあ、人間ブルドーザーだなぁ?


 おっと、いけない。


「ストップ。そろそろ結界との境界だから、ちょっと細工するよ」


 あの回路の定義だと、門と定義した場所以外からの侵入に対して諸々の反応を行うようになっている。

 つまり、新しく門を定義してやれば素通りできるってことだねぇ。


「ちょいちょいちょいっと。こんな感じかなぁ?」


 よしよし、問題無さそうだ。

 学生時代にたくさん勉強した甲斐があるねぇ。


「それじゃあ行こうか」


 さて、神獣はまだ元気かねぇ?


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