第40話 ズバッときたんだがぁ?
㊵
歳は、五十くらいかねぇ? それなりに立場のある男性に見える。
品のある優しげな雰囲気で、自信も感じる。実力は確かにありそうだけど、妙に苦労人の気配がするのはなんでかねぇ。
場所的この学園の先生とかなんだろうけど、じっと見られるような心当たりは、いっぱいあるねぇ?
「にゃぁ?」
「んにゃぁ?」
うん、主に君たちのことだよ。神獣ってことは見る人が見れば分かるだろうしねぇ。
僕の装備も、この隠者コスでさえそこらの国宝並には強力な装備だから、怪しまれてもおかしくはないなぁ。
あ、近づいてくる。聖職者のローブっぽいけど、学園の入り口にあった紋章と同じ柄がついてるから先生かなぁ。
「失礼。新学期から入学される方でしょうか?」
「ええ、はい。この子が」
「ほう」
あ、気づいたねぇ。リリアの魔力操作技術に。
見たところ、この男性はアドバンスジョブを極める直前ってところかねぇ? この見た目年齢でそれなら、マスタージョブになり得る、天才の部類だと思う。
そんな人が気がつかないわけないよねぇ。
「この国の未来は明るそうですね。ところで」
あー、ばっちりロックオンされてるねぇ。いや、これは僕にとっても丁度いいかぁ。
この人がどっち側かはまだ分からないけど。
「アイネリア婦人、今は、女子寮に向かっているところで間違いないかな?」
「ええ、そうです」
「でしたらこちらの方は別で待っていただくことになるはず。もしよろしければ、私の部屋でお茶でもいかがでしょう」
アイネリア婦人こと寮母さんは一瞬驚いて、納得、と。なるほどねぇ。なかなか立場のある人なようだねぇ。
「ええ、僕はかまいません。ユウとでも呼んでください」
「私はこの学園の教授をしています、グレンディアです」
ほう、教授。この学園の階級制度は分からないけど、少なくとも教授はそれなりの立場なんだねぇ。
日本だと、大学によっては一口に教授と言っても色々だったと思うけど。
「では、全て終わりましたらリリアさんはグレンディア教授のお部屋に案内します」
「ああ、頼むよ」
「それじゃあリリア、また後で」
「は、はい!」
グレンディア教授の部屋は校舎の上の方の階にあるみたいだねぇ。六階、かな。魔導エレベーターがあってよかった。階段だと大変だよ。
おや、ステンドグラスだ。ていうことは、ルネサンス様式にゴシック様式が合わさったような感じかなぁ?
装飾は、ちょっと僕の知らない様式だねぇ。これは校舎の中も案内してもらいたいところ。
神獣捜索のためにも必要かもだしねぇ。
「こちらです。そこのソファにどうぞ」
「では失礼して」
なかなか落ち着いてて趣味のいい部屋だねぇ。アンティーク調というか。
それでいて研究者の部屋感もある。今はストレージがあるからスッキリしちゃってるけど、こういう部屋も憧れるところあるんだよねぇ。
さて、ここまでで少し話したけど、今のところ悪意は見えないねぇ。フィアたちをチラチラ気にしてるのは引っかかるけど、どういう意図かはまだ断定できないなぁ。
彼が神獣を捉えている側って可能性もあるし、油断しないようにしないとねぇ。この街の統治形態的に、学園の関係者が一番怪しいとは思うし。
「んにゃぁ?」
「あ、こら、コペン、勝手に触ったらダメだよ」
学生の出入りもありそうだし、危ないものはないだろうけど研究用資料とかをめちゃくちゃにしちゃうのはまずい。
資料の山を崩すのは重罪だよ。
「ははは、その辺りなら構いませんよ」」
「にゃっ」
「んにゃぁっ!?」
フィア、回収ありがとう。本当に大丈夫そうではあるけど、一応ねぇ。
「どうぞ、それほどいいお茶ではないんですが」
「いえいえ、おかまいなく」
お、美味しい。なかなかお茶を淹れ慣れてるのかねぇ?
手つきにも迷いがなかったし、やっぱり節々に苦労人感が。
「早速ですが、本題に入りましょうか。リリアさん、でしたね。彼女が来るまで時間はあまりないでしょうから」
優しげな表情のまま、だけど、目つきが変わったねぇ。僕も気を引き締めないとダメそうだ。
「話は二つです。一つは、あなた自身について。それともう一つは、そちらの神獣様たちについてです」
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