第39話 なんか見られてるんだがぁ?
㊴
「すみません。新年度からこの子がこちらに入学するので、色々と案内を頼みたいのですが、どちらに向かえばいいでしょうか? あ、これ推薦状です」
ふむ、この門衛、ML百は超えてそうだねぇ。住人としてはかなり強い方だ。
たぶんアドバンスジョブの魔剣士あたりかな?
やっぱりこの世界でも、住人はなりたいアドバンスジョブへの転職に必要なベースジョブだけを鍛えるのが主流っぽいねぇ。
たまにベースジョブも複数鍛えてる人がいるけど、住人じゃレベルも上がりづらいらしいからなぁ。
「ああ、はい。話は聞いてます。今担当の者を呼ぶので、こちらで少々お待ちください」
お、連絡に使ってるのは職人が作った通信魔道具だねぇ。さすが世界でも有数の学園都市。そんな高価ものも持たせてるんだねぇ。
いや、この場合は母体であるリヒティア王国にさすがって言った方がいいのかねぇ?
あのストーリー上の開始地点なだけあって、なかなか情勢の安定した大国だし。
とかなんとか考えてる間に担当さんがやってきた。僕より少し上くらいのご婦人で、どうやらリリアの住むことになる寮の寮母さんらしいねぇ。
「手続き周りはもう済んでいるようなので、今日は制服のサイズ選びと寮の案内だけですね。女子寮は、男性の立ち入りは禁止されているので、お父様には別室でお待ちいただくことになります」
「ああ、いや、僕はこの子の父親ではなくてですね。まぁ、師のようなものですね」
服屋では放置したけど、学園にはご両親が来ることもあるかもしれないからねぇ。一応訂正しておかないとねぇ。
「これは失礼しました。しかし、言ってはなんですが、珍しいですね。魔法を教える側の方が当学園に弟子を入れるのに積極的だなんて」
そういえば、魔法系のクエストはだいたい偏屈な人が関わることが多かったなぁ。その辺はゲームでなくなっても変わらないんだねぇ。
「魔法ばかり学んでいても不十分ですからねぇ。特に人間関係あたりは、こうした場所でないと難しい場合が多いですし」
「あなたのような師を持って、彼女は幸せでしょう」
「そうだといいんですがねぇ」
こればっかりは、結果論でしかないからねぇ。もしかしたら、初期村で一生を過ごした方がリリアは幸せになっていた可能性もある。
なんだかんだ、レイ君もいい子だしねぇ。
しかし、学生寮はずいぶん奥の方にあるんだねぇ?
学園関係の敷地じたいかなり広いみたいだけど、割と中心部に近い辺りじゃないかい?
学生の生活は基本的に塀の内側で完結してるのかねぇ?
いやでも、街にはけっこう学生の姿があったし、気楽には外出してるのかも。
こういった形の学校には通ったことないし、今度またリリアに詳しく聞いてみるのもおもしろそうだ。
「リリア、学園の中を歩いてみた感想はどうだい?」
「なんというか、凄い、しか出てきませんね。イアスタ村とは違いすぎて。学園の敷地だけでもうちの村より広いんじゃないかってくらいですし、本当に私なんかが通っていいのか……」
ふむ、今朝はあんなに楽しそうにしてたのに、実際に中を見て不安になっちゃったみたいだねぇ。
まぁ、リリアは真面目だし、余計な心配をしちゃうのも当然かもしれないねぇ。
「大丈夫だよ。少なくとも、君の魔法の才は僕が保証する。これでもマスタージョブに就いてる身だし、自身を持っていい」
「マッ……!? か、重ね重ね失礼を」
おっと、マスタージョブってことも気軽に口にしない方が良さそうだねぇ。ゲーム時代はそこら中にゴロゴロいたから感覚が麻痺してたよ。
たしかに、住人って括りなら世界中に数えるほどしかいないもんねぇ。
「ええ、ユウ様のおっしゃる通りです。この学園には貴族以外にも、平民の学生が少なからず通っています。礼儀作法についてはこれから授業で学んでいけばよいですし、真摯な姿勢さえ見せてくだされば問題ありません。不安になる気持ちも分かりますけどね」
「は、はい!」
うんうん、寮母さんもいい人そうで安心だねぇ。子供にああいう笑みを向けられる人は、基本的にいい人だよ、経験上。
「それに、僕の知る限りだけど、この国の貴族は人格者が多いからねぇ。もし不当に攻撃されるようなことがあれば、ちゃんとリリアの味方になってくれるはずだよぉ」
寮母さんも頷いてるし、大丈夫そうだねぇ。ただの気休めにならなそうで良かった良かった。
まぁ、もし不当がまかり通りようなことがあるなら、僕が実力行使に出てもいいしねぇ?
「ニャン?」
「先生?」
「うん? どうしたんだい?」
いけないいけない。つい黒いオーラが。
ちょっと子煩悩なお父さんの気持ちが分かってしまったねぇ……。
ところで、さっきからこっちをじっと見てるあの人はなんなんだろうねぇ?
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