第41話 巻き込んでよさそうなんだがぁ?
㊶
僕自身と、フィアたちについてか。単刀直入でいいねぇ。
「なるほど。彼女らについてはともかく、僕のことで何か気になるようなことがありましたかねぇ?」
グレンディア教授の反応は、瞬きを一つ。ぱちくりとさせたって言った方がいいような瞬きだねぇ。
これが演技ならなかなかだ。
「そうですね。まずは、リリアさんの高すぎる熟練度が一つ。あなたの着ていらっしゃる装備が一つ。その身に纏っておられる膨大な魔力の耐性術式が一つ。そして何より、神獣様たちと共にいらっしゃることについてが、私の興味を引いてなりません」
ああ、うん、どれも気になって当然だねぇ。
耐性については意識的な魔法というよりは、ジョブ育成の中で覚えたパッシブ、つまり常時発動型の耐性スキルによるものだと思うけど。
さて、なんと答えようか。彼が神獣を捉えている側だとしたら、情報を渡しすぎるのはよくない。
捉えてる神獣に何かされたらたまったものじゃないしねぇ。
かと言って誤魔化して過小に見せかけるには、ちょっと色々見られすぎてる。
うん、そうだね。あえて本当のことを言って慎重に動いてもらう方がいいか。
「この子たちのこと以外は、一言で説明できます。僕は、マスタージョブを複数極めています」
「なっ!?」
おっと、動揺させすぎたかねぇ。お茶を零させてしまったよ。
「す、すみません」
「いえいえ、大丈夫ですって、コペン、君はまた……」
こぼれたお茶を勝手に飲んじゃって。
「んにゃぁ……」
苦かったらしいねぇ。前々から思ってたけど、この子はなかなかに好奇心旺盛だねぇ。以前フォレストオーガジェネラルに追われてたのも、そのせいじゃないかい?
好奇心は猫をも殺すとはよく言ったものだよ。
「お見苦しいところを見せました。それで、今はなんのマスタージョブに就いてるかうかがっても? どうやら魔術士系のジョブのようですが」
これも言ってもいいかなぁ。バランス型の大賢者はメタをはって対策するのが難しいタイプだし。
「大賢者ですねぇ」
「あの……」
どの大賢者なのかねぇ?
今の事情には詳しくないからねぇ。転職クエストの依頼人だった大賢者のおじいちゃんって存在するんだろうか。
「……今度、色々とお話を聞かせていただいても?」
「んにゃ!」
「いや、なんで君が返事をするんだい、コペン。まあ、機会があれば」
さっきから本当に自由だねぇ。フィアもよくみたらめちゃくちゃくつろいでるし……。
「ありがたいです。では、神獣様たちとご一緒なのは、もしかして……」
この質問が一番大事かもしれないねぇ。もしコペンやフィアも利用しようと考えてるとしたら、僕の返事次第で対応を変えてくるだろうし。
あえて軽い扱いをしてみるかい? でももし、彼が敬虔な女神信徒だった場合は顰蹙を買いそうだ。
そうするとリリアの学生生活に悪影響があるかもしれないし、難しいねぇ。
「んにゃ?」
「ああ、また机に乗って」
時間稼ぎ的にはナイスだけども。
「いえ、お気になさらず。それで、えっと、神獣様はどうなさったんでしょうか?」
「おやつは無いのか、と。いや、本当にすみません」
お腹すいたんだねぇ。……え、フィアもかい?
一応部屋にお邪魔してる身だからねぇ。いつものようにベーコン出してはいって訳にはいかないでしょう。
ていうか、フィアとコペンがこれだけ無警戒だと、警戒してる僕が馬鹿みたいじゃないか。
まぁ、つまりはグレンディア教授は白ってことなんだろうけども。
「彼らのおやつを出しても大丈夫ですか? 燻製肉なんですが」
「ええ、もちろんです。神獣様のことですから」
「ではお言葉に甘えて」
うん、そんな気はしてたけど、やっぱり敬虔な信者っぽいねぇ。適当なこと言わなくてよかった。
フィアたちはもう大丈夫かねぇ。にゃるにゃるご機嫌そうに言ってるし。
「それで、この子たちとの関係でしたか。以前縁があって、友誼を結んだんですよ」
「神獣と友誼……。ジョブの習熟度合いといい、先ほどどこからともなくお肉を取り出したことといい、もしやあなたは、渡り人、なのですか……?」
渡り人の呼称って今の世界にもあるんだねぇ。住人たちが僕たちプレイヤーを区別するための言い方だけど。
「ええ、まあ、はい」
「……おお、やはり渡り人は、女神の使途は、存在したんですね。それで、渡り人は他にもいらっしゃるんですか?」
「そう聞いてますねえ。とりあえず、いったん落ち着いてください。またお茶が零れてしまいそうだ」
まさかここまで興奮されるとは。神獣に対してもかなり敬った様子が見て取れてたけど、まだ自制してるようだったのにねぇ。
「し、失礼しました。どうも今日は粗相ばかりで」
「いえいえ」
ここまで女神側に傾いてるなら、いっそ協力を要請してもいいかもなぁ。僕だけじゃ調べきれない場所も多いし。
いや、忍び込めばなんとかなるんだけど、時間が掛かる。楽できるところは楽をした方が、拘るべきところに拘れてクオリティが上がるからいいよねぇ。
よし、巻き込んじゃおうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます