第31話 若者たちがみんなオシャレなんだがぁ?

「いや、なんでもないよ。うん、もうちょっと先に行ってみようか。見つからないようだったら、その辺のお店の人に聞いてみよう」

「はい」


 旅人用の施設が集まってる区画は少しだけ中央に寄ったあたりにあった。たぶん、学生の家族や学園そのものに用のある人が利用することの方が多いからなんだろうねぇ。


 ここみたいにリビングプラス数部屋って宿ばかりだったのも、そういう理由かなぁ。


 ただ、中央に寄るほどフィアが目立つようになっちゃったけど。

 騒ぎにはならなかったのは、首輪のおかげかなぁ。みんな首輪を見て安心したように表情を変えてたから、やっぱり分かりやすい目印って大事だねぇ。


 旅に出たばかりの頃はフィアたちも首が気になってたみたいだけど。

 まぁ、もうすっかり慣れたみたいだから大丈夫でしょう。瞳と同じ赤紫色なのはむしろ気に入ってるみたいだしねぇ。


 その彼女たちは、従魔小屋で落ち着けてるかねぇ?

 コペンだけならともかく、フィアまで部屋に入れる宿はさすがになかったからねぇ。


「リリアはどっちの部屋がいいか選んでていいよ。僕はフィアたちの様子を見てくるよ」

「私も部屋を決めたら追いかけます!」

「了解。じゃあ、そのままお昼を食べに行こうか」


 そろそろいい時間だしねぇ。

 ついでに街の散策もして、学校に必要なものがあったらそれも買って。


 うん、囚われた神獣の調査の前にやることがいっぱいだねぇ。やっぱり神獣探しはのんびりやろうか。

 たぶん、数年かかっても怒られないよ。


 それより、僕としてはこの街の造りが気になる。

 一見行き当たりばったりでテキトーに作ったような通りなんだけど、妙に引っかかるんだよねぇ。元ゼネコン勤務の勘というか……。


 うちは大手じゃなかったから、大規模事業はそんなになかったけどねぇ。


「フィア、コペン、居心地はどうだい?」

「にゃぁん」

「んにゃ」


 悪くないけど窮屈、か。まぁ仕方ないねぇ。

 しばらくは我慢してもらう他ない。


 あー、でも神獣の捜索でしばらく滞在しないとなのかぁ。そうなると、街の外に拠点を作るのもいいかもねぇ。

 第二秘密基地。ありだよねぇ。


 まぁ、貸し家にするって手もあるから、また後で考えようか。


「先生、お待たせしました! 宿の人が近くに従魔も入れるお店があるって教えてくれたんですけど、いったんそこに行ってみますか?」

「うん、そうだね。フィア、コペン、昼食にいこう」

「にゃぁ」

「んにゃ!」


 お昼時だからか、さっきよりも通りに人が増えた気がするねぇ。やっぱり若い子が多い。

 これからリリアの学友になる子もいるんだろうねぇ。


 いやぁ、なんだかキラキラして見えるよ、彼らが。エネルギーに溢れてるっていうか……。単純にかっこうの問題もありそうだ。みんな、けっこうおしゃれしてるねぇ?


 対して僕らは、明らかな旅装……。


「リリア、お昼を食べたらまずは服屋を探そうか。いつまでも旅をする恰好じゃ目立っちゃうし」

「服ですか? 私は別にこのままでも大丈夫ですけど、先生がそういうなら」


 うーん、この辺は辺境の村人故かねぇ。おしゃれにはまだ無頓着みたいだ。

 とは言え、その辺の意識も同年代の中に混ざったら変わってくるだろうし、今のうちに用意しておいて損はないでしょう。


 ついでに休日用の服も買ってあげようかねぇ。


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