第20話 ベーコンづくりは楽できないみたいなんだがぁ?

 さて、どの部位をベーコンにするかねぇ?

 一応、豚バラ肉がおすすめって書いてあるけど、そもそもの目的が大量に余った肉の処理だからねぇ。


 まぁ、色んな部位で試せばいいか。


 ストレージから適当に肉ブロックを取り出して、丁度いいサイズに切り分ける、んだけど、包丁でこのドでかい塊を切り分けるのは大変そうだねぇ?


「うーん、剣でも使おうかねぇ?」


 衛生面的に、できれば新品がいいねぇ。


 あ、そうだ。

 たしか経験値稼ぎに作った大量のショートソードがあったはず。


「うーん、ちょっと短いかねぇ?」


 まぁ、そこはスキルでどうにかすればいいか。

 とりあえず、この剣を消毒しないとねぇ。


 錬金術師のスキルでも作るれるんだけど、量を作るならもっといい方法がある。

【ウォーター】の魔力回路をちょっと弄って、座標維持術式も加えて……っと。


 よしできた。

 ちゃんと空中にアルコールの球が浮かんでる。


 ここに剣を突っ込んでっと。


「まぁ、こんなものかなぁ」


 で、これを使って肉塊を切り出すんだけど、剣を握るのは久しぶりだねぇ。

 現実だと、高校の部活以来かな?

 あれは竹刀だけども。


「ふっ!」


 よし、いい感じ。

 ジョブのおかげか、太刀筋もぶれてなかったねぇ。

 綺麗に切れてる。


 それで、えっと?

 はいはい、塩を刷り込むのね。


 塩は戦略物資だからねぇ。

 ゲーム時代に大量にストレージに放り込んだから、豪快に使っちゃおうか。


 すりすり、すりすりっと。


「んにゃぁ?」

「うん? これかい? これは今ベーコンってものを作ってるんだよ。けっこう時間がかかるから楽しみにしてて。……上手くいくかはまだ分からないけどねぇ」

「にゃん!」

「まあ、善処はするよ」


 はい、すりすり、すりすり……。

 じっと見られてるとやりづらいんだけど?


 仕方ない。

 えっと、まだ塩をすり込んでないやつは、この辺かな。


 これ二つに薄力粉と卵、それからパン粉をかけて、熱した油で揚げる。

 で、適当な大きさに切って、軽く冷ましたら完成っと。


「ほら、これでも食べてて」

「にゃあん!」

「んにゃあっ!」


 よし、これでしばらく時間を稼げる。

 猫舌でなかなか食べられれないだろうからねぇ。


 それじゃあすりすり再開っと。


「――ふぅ、これで全部だねぇ。それで、次は……」


 脱水シートで巻く?

 そんなものあったかなぁ?


 あ、メモがある。

 代替案、スライムシート?

 これは僕の字じゃないねぇ?


 たぶん一緒に作ろうとしてた誰かなんだろうねぇ。

 まぁ、とりあえずやってみようか。


「いや、待てよ? これ、脱水するなら魔法でどうにかなるんでない?」


 えっと、術式的に近いのは、【水流操作】かねぇ。

 海賊のスキルだけど、一応くくりは魔法だし。


 出力と効果範囲を変更して、ベクトルを弄って……。

 こんな感じかなぁ?


 ものは試しだねぇ。

 それ、発動っと。


「――あ、あちゃー。こりゃダメだ」


 最低出力まで下げてもまだ強かったかぁ。

 水分が抜けすぎてカチカチになってる。


 不自然に一気に抜いたから、ちょっと変質もしてそうだねぇ?


 これは没!

 やりようはあるだろうけど、そこまでいくと独自魔法の域になりそうなんだよねぇ。


 システムの補助がない分、プログラミングと物質化学を合わせたような大系で好き勝手作れて、面白くはあるんだけど、外力とかも計算にいれないといけなくて大変なんだよねぇ。


 そういう意味じゃ建築の設計に近いから、僕は割と得意ではあるんだけどねぇ。


 仕方ない。

 スライムシートを試してみようか。


 これを巻きつけて、冷蔵庫で一日おくのねぇ。

 じゃあ、今日はここまでかぁ。


「にゃん?」

「いや、まだ終わりじゃないよ。何日かかけないといけないみたいだから、楽しみに待っててちょーだい」

「んにゃぁ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る