第21話  ベーコンへのこだわりが強すぎるんだがぁ?

 ――さて、どうかな……?


「んにゃ!」

「にゃぁん!」

「よぉし!」


 苦節一ヶ月。

 試行錯誤を重ねて、ようやくだねぇ。


 いや、ベーコンじたいはすぐ成功させられたんだけどねぇ。

 あまり難しくないレシピだったのと、本当なら難しい部分を魔法やら魔道具やらで調整できたからねぇ。


 ただ。フィアとコペンが妙にやる気だしちゃって、好みの味になるまで何回もやり直させられたんだよねぇ……。


「じゃあ、ちょっと焼いてみようか」

「にゃっ」


 フィアたちにはそのままでもいいけど、僕が食べる分には火を入れないとねぇ。


 鉄なべに薄く油を敷いたら、厚めに切った自家製ベーコンを投入!

 うーん、いい香りだねぇ。


 スモークチップは色々試した結果、妖仙桜ようせんさくらって聖樹の一種になったんだよねぇ。

 まだ焼いてる段階なのにもうふわっと桜の香りが香ってくるよ。


「うん、こんなものかねぇ」


 焼きあがったベーコンをそれぞれの器に分けてって。

 複数部位あるから、一つ一つ試してみないとねぇ。


 二匹はさんざん味見してたけど、僕はようやく初実食だねぇ。


「にゃぁっ!?」

「コペン、もうちょっと冷まさないと君には熱いよ? さぁて、それじゃあ僕も、いただきますっと」


 まずはおススメらしいバラ肉から。


「んっ!?」


 噛んだ瞬間脂の甘味と桜の香りがぶわって広がったねぇ。

 旨味も凄い。


 ただでさえ濃厚だったオークジェネラルの肉がいっそう濃厚になってるよ。


 僕ぁマヨネーズを付けて食べるのも好きだけど、これじゃぁマヨネーズの方もそうとう拘らないと負けちゃうねぇ。

 マスタードだったらいい感じのバランスになるかもなぁ。


 うーん、これは、お酒が飲みたくなるねぇ。

 まだ昼間だけど、別に仕事してるわけでもないし、今日はリリアの授業もないし、別に飲んじゃってもいいのでは?


 背徳感に包まれちゃってもいいのでは!?


「いやいや、他の味見を先に済ませてからにしようかねぇ」


 それからでもまだ遅くないでしょ。


 じゃあ次は、ロースかなぁ。


 見た目は、バラ肉より脂身が少ない気がしないでもないねぇ。

 香りは、こっちも上々。

 これだけで日本酒が飲めそうだねぇ。


「ほふっ……。うまぁ……」


 こっちも予想以上に美味しいねぇ。

 旨味の爆弾って言えばいいのかねぇ?


 いやでも、バラ肉よりは少しあっさりしてるかも。

 こっちの方がおじさんの胃袋には優しいねぇ。


「にゃぁん」

「んにゃぁ」


 二匹も気に入ってるみたいだねぇ。


「ちなみに、焼いてる方と焼いてない方、どっちが好きだい?」

「にゃぁ」

「んにゃ」


 ほう、分かれたね。

 フィアが焼いてる方で、コペンが焼いてない方か。


 じゃあフィアにあげる時は軽くあぶってあげたほうがいいかな。

 外でも炙るくらいなら魔法ですぐだしねぇ。


「にゃっ!」

「え、早くもっとたくさん作ってって、僕これからお酒飲もうと思ってたんだけど」

「んにゃぁっ」


 いつでも飲めるだろうってそれはそうだけどね?


 まあ、作るのに時間かかるし、そっちを先にやろうかねぇ。

 ベーコン作り始めてから二匹がオークジェネラルばっかり狩ってくるようになっちゃって、むしろ増えてるし。


 溜まったお肉の処理のために作り始めたのに、結果さらに溜まるって、これはどうなんだろうねぇ……?


 はぁ、お酒はもう少し我慢するかぁ。

 まぁ、今日はレイ君たちも来る気配がないし、のんびりやろうかねぇ。


 なんなら、今度彼らにも食べさせてあげようか。

 孤児へのむやみな施しは逆に彼らを不幸にしかねないって意見もあるけど、僕ぁ原動力、未来への渇望になる場合もあると思ってるしねぇ。


 そもそもあの四人はちゃんと親いるし。


「にゃん!」

「ああ、分かった分かった。今作るから」


 そんなに気に入ったのかね、君たち。

 フィアはもういい大人でしょうに。


「にゃぁ」

「え、今度ドラゴン肉でもやってみてくれ? まあ、機会があればねぇ」


 手持ちにも多少はあるけど、これは上位ドラゴンの肉だからねぇ。

 祝い事、リリアの誕生日にでもとっておきたいよねぇ。


 もしまたドラゴンを狩ることがあったら作ろうかなぁ。


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