第12話 堀作りを依頼されちゃったんだがぁ?

「お前さん、魔術師なら、土の魔術は使えるね?」


 あー、ほらやっぱり。


「ええ、まぁ……」

「それなら、村の周りに堀を掘ってくれないかねぇ。もちろん礼はするからさぁ」


 あぁ、さすがにまずいとは思ってたんですねぇ。

 あの柵じゃまぁ、せいぜいゴブリン相手に時間稼ぐのが精一杯ってところでしょうからねぇ。


 最下級やその一つ上の種のゴブリンなら、推奨討伐ML一桁だし、時間さえ稼げるなら村人でもある程度安全に討伐できるだろうけど。


 さてさて、どうしようかねぇ。

 あまり気楽に受けると際限ないからねぇ。


「ちなみに、お礼は何がもらえるんです?」

「そうじゃのう、いくらかの作物と、種、あとは金も多少なら出せるぞ」


 作物と種とお金かぁ。

 お金は、ぶっちゃけいらないなぁ。


 あの場所で使う機会ないだろうし、そもそもゲーム時代に稼いだお金がたくさんあるからねぇ。

 そういえばこのお金、ちゃんと使えるのかね?


 まあ使えなくても、売れるものはたくさんあるし。


 種もリリアちゃんたちにもらう分でもまあ。


 作物は嬉しいかなぁ。

 スキルを使っても育つまで時間かかるしねぇ。

 小世界樹みたいな特殊例じゃないかぎり。


「おじさん、だめ?」


 うぐ……。

 間接的にとはいえ、リリアちゃんを危険な目に遭わせてしまったからなぁ。


 ちょっと断りづらいねぇ。

 ……まぁ、簡単なものならいいかねぇ?


「貰える分に見合う程度でいいなら、まぁ」

「おおっ、それは助かる!」

「しかし、堀ですか。村人が落ちたら危なくないですか?」

「そこはまぁ、今ある柵の向こう側に作ってくれる分には大丈夫じゃろう」


 うーん、まぁ、村長さんが言ってるなら大丈夫かねぇ?

 これ以上何か言って要望が増えても面倒だし、いいか。


「分かりました。それじゃあ、さっそく取りかかっちゃいます」

「ではこちらもお礼の用意をしておこうかの」


 サクサク進むのはいいねぇ。

 諸々の調整の調整だとか、急にちゃぶ台を返す先方の上司とかがいないってだけで快適だ。


 さてさて、鶏の方もあっちで準備しておいてくれるってことだしさっさとやっちゃうかね。

 魔法を使いながら村の外周を一周するだけだし、すぐ終わるねぇ。


「【ピットホール】」


 落とし穴を作る魔法だけど、堀作りにもちょうど良いねぇ。

 あ、ちょっと深すぎたかなぁ?


 まぁ浅いよりはいいか。

 このまま続けていこう。


 これ、やろうと思えば穴の形も多少いじれそうだねぇ?

 僕の力加減の練習にもなりそうだ。


「しかしこれ、やっぱり落ちちゃいそうだよねぇ。村の外から帰ってきた人とか」


 少しだけ外側を盛り上がらせておこうか。

 膝の高さくらいあればいいかねぇ?


「――ふぅ。こんな感じかなぁ?」


 とりあえず一周してみたけど。

 堀の深さはだいたい十メートル強。


 建物四階から五階分ってところだねぇ。


 幅もそれくらいだから、二番目の町や三番目の街のモンスター相手なら平気かなぁ。

 飛べるモンスター以外。


 でも、この森の奥のモンスターも出てくるってなると、無力だよねぇ。

 フォレストオーガジェネラルがあのサイズだったもんねぇ。

 簡単に跨がれちゃう。


「仮に、塀も作るならどんな感じがいいかねぇ?」


 高さは、二十メートルはいるかなぁ。

 土だとたぶん強度不足だから、最低でも石材。

 修繕のことも考えて、ブロックを積み上げる感じかねぇ。


 石材でも正直不安なんだよねぇ。

 その辺の木を引っこ抜いて叩きつけるだけでも、あいつらなら壊せるだろうしねぇ。


 魔法防御も考えると、自己修復の付与をした魔法金属で外側を覆う感じかねぇ?

 でもそれでも時間の問題かぁ。


「やっぱり防御だけで考えると限界があるよねぇ……」


 こちら側からも攻撃できるのはやっぱり必要条件だよ。

 そうなると、奥地のモンスターにも一応通用するくらいの魔導砲くらいは置いておきたい。


 上り下りできるようにするのは当然として、ついでに避難所の機能も持たせる?

 中を空洞にしたらそれも可能かなぁ。


 多少防御力は落ちるけど、そこは付与で補える。

 むしろ、上の方の修繕が楽になるメリットの方が大きいかもしれないねぇ。


「とすると、今掘った穴に基礎を置いて、もう少し外側まで拡張して……」


 あ、防壁なら攻勢結界を張れるようにしてもいいか。

 普段使いには消費が大きすぎるから、緊急時だけ起動する感じで。


 エネルギーは、普段から狩ってるだろうモンスターの魔石と、自然魔力の吸収充填かなぁ。

 小さくて純度の低い魔石でも、集めればエネルギー量だけは確保できるから、あとはそれを運用できる装置を作ればいい。


「……ちょっと、作ってみようかねぇ?」


 なぁに、何か言われたら壊せばいいさ。

 スキルがあればそんなに大変じゃないだろうしねぇ。


 資材も一定以上のランクの素材なら腐るほどあるしねぇ。


「――な、なんじゃぁ、これは……!?」

 

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