第11話 あの子また来ちゃったんだがぁ?
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「えーっと、こんにちは、お嬢さん」
「あっ、あなたは!」
あー、やっぱり僕を探してたかぁ。
そんな分かりやすく目を輝かされるとねぇ。
とりあえず悲鳴を上げられなかったからセーフで。
「また、どうしてこんなところに?」
「あの、私、おじさんにお礼がしたくて!」
なるほどねぇ。
律儀だねぇ。
そのためにまた、危ないところに来るのはいただけないけど。
「まぁ、僕に会いたかったのなら一度村へ戻りましょうか。ちょうど僕も村に用がありましてねぇ」
僕に会いたかったのなら、って、自分で言っておいてゾワっとしますねぇ。
相手が相手だからなのかねぇ?
この前助けた、彼女、絵に描いたような金髪碧眼の少女は、リリアと言うらしい。
歳は十五で、やっぱり中学生の年齢。
髪が長いから引っ掛けないか心配だけど、まぁ、一つにまとめてるから大丈夫かぁ。
「ふぅ、着いたねぇ。これで一安心だ」
「ですね」
彼女の案内でやってきた村は、僕の記憶にある通りの初期地点、イアスタ村。
初期村って言われるだけあって、なぁんにもない。
柵も簡素……すぎないかい?
これ、大丈夫なのかねぇ。
うちの辺りでフォレストオーガジェネラルが出たって考えると、これじゃぁいつか事故が起きるだろうねぇ。
いや、頼まれたわけでもないのに気にするのはやめよう。
何か頼まれたらたまったものじゃないからねぇ……。
こっちがちょっと隙というか、優しさを見せたらどこまでもすぐ付け込んで、食い潰そうとしてくるんだぁ、人間ってぇやつは。
あの時もそうだった。
ちょーっとキャパオーバーの同僚を手伝ったら……ってまた余計なこと思い出しちゃったねぇ。
あんな記憶、ぽいだよ、ぽい。
「ところで、この前はどうしてあんな所にいたんだい?」
「ああ、あの時は、私森の入り口辺りで薬草を採取してたんです。そしたら、奥の方から爆発する音が聞こえてきたから気になって……」
「ふーん、爆発音……」
ってあれ?
それ、僕じゃね?
ファイアーボールの試し撃ちした時のじゃね?
「どうかしましたか?」
「あ、いや、何でもないよ、うん」
完全に僕のせいだねぇ、あれ。
そりゃ、爆発音なんか聞こえたら一応確認しにいくよねぇ。
いや、彼女も迂闊ではあるけどねぇ?
「あっ、見えました。あれが私の家です!」
まぁ、普通の家だねぇ。
ファンタジーゲームの村でよくありそうな感じ。
当時だったら、一応入れるけど何もない家、って感じかねぇ。
「ただいま! お母さん、お父さん」
「おかえりなさい、リリア」
「ああ、おかえり。おや、もしかして、その方が?」
「そう!」
なるほど、ご両親はフォレストオーガジェネラルの件は把握してるのねぇ。
とりあえず自己紹介だけすませてっと。
こちらで名乗るのは、ユウだけ。
ユウゾウって響き、あのゲームにあまり無かったと思うし。
「その節は、娘を助けてくださってありがとうございました」
「いえいえ、たまたま居合わせただけですから。顔を上げてください」
そもそも僕が原因っぽいですし。
「それでも、お礼はさせてください。と言っても、大したことはできないのですが……」
これは、こちらから欲しいものを言った方が良いかねぇ。
見たところ、家畜をたくさん飼ってるようだし、それ系がいいかなぁ。
あと種ね。
「でしたら、卵と牛乳を分けてもらえたら。あと、野菜の種も少し欲しいですねぇ」
「それでしたらいくらでも! なんなら、鶏も二、三羽連れて行ってください」
飯の種だろうに、大盤振る舞いだねぇ。
まぁ、娘の命ってなるとねぇ。
ありがたくもらっておこうか。
貰うものをしっかり貰うのも、人間関係を円滑にするコツだよねぇ。
すぐ帰るつもりだから、そのまま鶏やらを受け取りに行く。
「おや、お客さんかい?」
「あっ、村長さん」
ふむ、いかにもなお爺さんだ。
この辺のベタ感は、元々ゲームだからかねぇ?
「ほら、前に森で助けてくれた人」
「ほぅ、あんたが……」
一応軽くお辞儀はしておくけど、まぁ、胡散臭そうに見られてるねぇ。
この格好だから仕方ないけど。
こんな薄汚れたローブのおっさんが、フォレストオーガジェネラルを倒せるなんて思わないよねぇ?
フォレストオーガくらいに勘違いしてたとしても疑うよ。
これはこれで隠者スタイルの醍醐味、かねぇ?
「強そうには見えんが、あんたがねぇ……」
「ユウさんはこう見えて、凄い魔術師なんだよ?」
リリアちゃんの方が不満げなのは、若さだねぇ。
でもいい子だ。
「ほー?」
あ、このキランって擬音が聞こえてきそうな目、何か頼まれるやつだ……。
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