第2話 なんか飛び出してきたんだがぁ?

 まあ、考えても仕方ないか。

 どうせ戻れないっぽいしねぇ。


 頑張ってくれたまえ同僚諸君、ってことで。


 それより今は、このMLOの世界を満喫することを考えようかねぇ。

 いやぁ、ワクワクするねぇ。


 このUIとか、昔見てたままだよ。

 HPヒツトポイントMPマジツクポイントSPスタミナポイント……。

 大学生に戻った気分だねぇ。


「ふむふむ、MLメインレベル三五五〇。名前、多田野ただの雄三ゆうぞう……。こっちは本名なんだねぇ」


 まあどうせ、キャラ名もユウとかだったと思うし、何でもいいか。


 うーん、一応、ゲーム時代にできたことは全部できそうだねぇ。

 でも最下級魔法であれだからなぁ。

 上級魔法でも使うのが怖いよ。


 レベル上限解放した大賢者のステータスのせいだろうねぇ。


 とりあえず、最上級魔法と独自魔法は絶対封印だねぇ。

 調子に乗って現実で使うには色々ヤバい魔法作った気がするし。


 ああ、そうだ。

 この世界なら大工をするのもいいかもねぇ。


 現場の人たちと空気感が合わなかったから管理の方に行ったけど、本当はそっちに行きたかったんだよねぇ。


 うーん、ちょっとこれは、本当にワクワクしちゃうねぇ。

 初任給を貰った日だとか、新人のときの休日だとかを思い出すよ。


 二年目以降はいかに休むかしか考えてなかったしねぇ……。


 おっと、あんな記憶はもうぽいしちゃおう。

 ろくな記憶じゃないし。

 特にあの時の課長は……。


「うん?」


 これは、魔物の気配?

 それと弱い気配が二つ。これは、なんの気配だろうねぇ?


 ていうか気配ってこんな感じで分かるんだねぇ。


 なんて言ってる場合じゃなさそうだ。


 飛び出してきたのは、金髪碧眼の女の子。

 あの服は、初期村の村人だね。


 腕の中には真っ白な猫がいる。

 猫は怪我してるみたいだね。


「はぁっ、はぁっ、え、おじ、逃げて!」


 この辺だったらゴブリンとかそのあたりかなぁ。

 村娘には脅威だけど、今の僕には雑魚だねぇ。


 なんて考えてたら、沢山の枝葉が舞った。

 現れた影は、ゴブリンにしては大きすぎる。


「あれは、フォレストオーガジェネラル!?」


 そういえば初期村の奥にはエンドコンテンツのダンジョンがあったねぇ。

 ここってそんな奥地なのかね?


 いや、でも村娘が一人で来られるような場所なんだよねぇ?

 こんなところに推奨討伐MLメインレベル二千台後半のモンスターがいるかねぇ?


「おじさん! 早く!」


 そこら辺もゲームと現実の違い、ってことなんでしょうねぇ。


「まあ、見ていてください」


 何にせよ、あれは討伐しないと。


 炎系は危なそうだし、土系には耐性があったはず。

 それなら、氷魔法かねぇ。


「【アイスランス】」


 最下級の一つ上、下級魔法だけど、まあ、大丈夫でしょう。

 これでも超越者だなんて呼ばれてたしねぇ。


 空中に僕の倍ほどはある氷柱つららが一つ生み出され、フォレストオーガジェネラルに向かって発射される。

 それはフォレストオーガジェネラルの緑色の肌を突き破って、よく鍛えられた胸筋も貫いて大穴を開けた。


「す、凄い……」


 心臓代わりの魔石があの辺りだったはずだし、これで終わりかねぇ。

 HPゲージが見られないからちょっと難しい。


 一応警戒して見ていたけど、杞憂だったみたいだねぇ。

 フォレストオーガジェネラルの巨体が前に倒れて、土煙をあげる。

 なかなかに重そうだ。


 おっと、さっきの女の子たちはどうかな?


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