第二審

 巻き進めリトライ───。




 数日後。


 東京高裁にて、殺山ころすやまの裁判が行われていた。


「被告はジョン氏をナイフで滅多刺しにして殺害した上に、当時同じホテルにいた女性にその罪を被せようとしました。到底許されることではありません。検察側としては死刑を求刑致します」


 そう言ったのは、検察官の死罪求しざいきゅう 権蔵ごんぞう。この道50年のでえベテランである。二度目の裁判でも彼が出張っていた。


「異議あり! 殺したのは被告人ではありません! 無罪を主張します!!」


 そう言ったのは、弁護士の便後べんご 屁多へた糞郎くそろう。この道80年の大大大でえでえでえベテランである。彼も出張っていた。


 ───カンカンッ!


「静粛に」


 そう言ってガベルを叩いたのは、裁判長のだま れいである。この道130年の大大大大大でえでえでえでえでえベテランである。彼も出張っていた。


(今度こそ頼むぞ……)


 殺山ころすやまは静かに祈る。

 と、権蔵ごんぞうが自らの主張の根拠となる証拠を提示する。


「えー、先程配布した資料にありますように、犯行の様子がホテルの防犯カメラに映っております。また、現場に残っていた凶器と被告の指紋は100%一致し、被害者が遺したダイイングメッセージには"ころすやま"と書かれております」


 屁多へた糞郎くそろうは反論を試みる。


「異議あり! これらの証拠は捏造です! 被告がそう言っているからです!!」


 ───カンカンカンッ!


「静粛に」


 れいはガベルを叩き、屁多へた糞郎くそろうを落ち着かせると、言う。


「弁護人、反論はありますか?」


「さっきから言ってるでしょう、検察の証拠は全て捏造です!」


(なっ、流れがまるで変わっていない……! こいつ弁護下手くそか!? クソッ、出任せでもなんでも使って自分で自己弁護するしかない……!)


 殺山ころすやまは自身の弁護士を見限り、覚悟を決める。


「そうですか。では評議に───」


「ちょっと待ったァ!!」


 殺山ころすやまが叫んだ。


「私には無罪を証明する決定的な証拠がありま───」



 ガァンッッッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



「黙れや!!!! 司法試験も通ってないカスが口出しすんじゃねェよ、何様だテメェはよオイ!!!」


 だま れいが過去一の音量で叫び、ガベルを机に叩きつけた。


「ひぃっ! すっ、すみません!!」


 殺山ころすやまは泣き寝入りの他無かった。

 かくて、裁判は評議に入った。



 ♢



 2分後。評議が終わり、被告とその他諸々が法廷に入る。


「主文は後回しにします」


 裁判長は最初にこう述べ、判決の言い渡しをはじめた。



「理由として、被告の殺人や証拠の捏造を否認する材料が存在せず、被告の有罪が全面的に認められたためです」




 そして主文を言い渡す。




「主文、被告人は死刑」




「いやだあああ!!!!!!!!!!!!!!」




 かくて、裁判は終結した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る