第三審前夜
「第三審前夜、
「頑張りマース」
ヨハンはそう言った。
「クソッ、まさか俺がした殺人の全てがバレちまってるとはなぁ……計画は完璧だったはずなんだが……」
今、二人は都内のホテルの一室にいる。あの事件の起きたホテルとは別のホテルである。
部屋は最上階───30階のスイート。
「アレホドの証拠が出揃っテマースから、無罪放免は無理デース。ドウニカ、情状酌量がもぎ取れるようなコトは無いデースか?」
「はぁ? ざけんなよ!! 無罪にならなきゃ刑を受けちまうじゃねェか!!! そんなの許さん!! どうにか俺が無罪になれる言い訳を考えろや!! 頭良いンだろ!?」
「オーウ、他力本願の
ヨハンは早くも後悔していた。そしてやる気も無くしていた。
「デーシたら、国外逃亡でも試みたらドウデュースか?」
「お、いいなそれ」
「Oh what a crazy ma~n」
皮肉のつもりで言ったことが受け入れられ、さすがのヨハンも困惑である。
「んじゃ、今から俺は準備するから、お前は俺の周りを見張っといてくれ」
「無理デース」
「は? なんでだよ!! テメェが言い出したんだろうが!!!」
「法の番人として許容できないデース」
「チッ、役立たずが」
──ガッ!!
その辺にあった空き缶を蹴り飛ばした。
空き缶は綺麗な放物線を描いて飛んでゆく。
「ナイスショットデース」
「まァな」
ゴッ!! カランカラン……
と、鈍い音が響き、空き缶が転がる音がした。
「んぉ? ──いっ!?」
異音を耳にした
「やべやべやべ……」
「どうシマーシタか?」
横からヨハンが下を覗こうとする。
「くっ…!!」
「……What?」
その様子を訝しんだヨハンは、
だが、
「何デースか? 何を隠そうとしてるンデースか?」
「なッ、何も無い!! 何も無いから!! 戻れ!!!」
だが、その態度がさらに疑念を加速させる。
ヨハンは鍛えていた。仕事柄、荒事が予想されるためだ。
だが───
「…アレ? ホントに何も無いデース」
「…え?」
「……あれ?」
見間違いだったのだろうか?
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