雨に沈んだビー玉
和よらぎ ゆらね
雨に沈んだビー玉
雲間から差す陽の光と頬を打つ雨粒が街を淡い硝子細工のように変えていた。
天気雨はどこか子どもの秘密をこぼしたみたいに静かに降りてはきらめき、消えていく。
舗道に転がる一つのビー玉。
透明な殻の中に閉じ込められた青はまるで空を溶かし込んだかのように深かった。
それは昨日飲み干したラムネ瓶の中から取り出したもので、 それは指先に冷たい感触を残し、握るたびに夏の音がかすかに響く。
雨粒が落ちるたび、ビー玉の中で世界が逆さに揺れる。
小さな地平線、光のゆらぎ、幻の街並み。
わずかな瞬きのあいだに、無数の景色が現れては沈んでいった。
ビー玉が見せるのはほんとうにただの雨の反射なのか。 それとも、失くしてしまった夏の記憶の断片なのか。
掌のなかで濡れたビー玉が光を抱え、沈黙のなかで時を閉じ込めている。 雨はまだ降り続いている。 けれど、その雫さえも、この小さな硝子の中に吸い込まれていくように見えた。
天気雨の午後
爽やかな音と共にビー玉がころんと落ちていく
雨に沈んだビー玉 和よらぎ ゆらね @yurayurane
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます