真定 その3
劉秀がなんとか真定王との会見を済ませた頃、困っていたのは劉秀に去られた邯鄲の
その卜者、
王郎、劉林の話を聞いて、曰く「つまり兵を集めるために、王族の名が必要と言われるか。そこもと、
劉林答えて曰く「平干繆王元の後は
眉を
王莽が漢を簒奪した当初、長安に自ら
皇帝の忘れ形見、本来なら話にならないと唾棄される噂である。しかし前例があった。宣帝その人である。武帝に叛乱を働いたと
王郎が口を閉ざしてしばらく、劉林は
王郎曰く「我が言を信じられるか。捕えて殺そうとお思いではないか」
劉林返して曰く「我らの上に立ってもらえばこそ。赤眉はすぐそこまで来ておる。それに何故に害さねばならぬ。
王郎は、しばし待たれよと言うと、立ち上がり、部屋の周りを調べ、裏手から外を
王郎曰く「成帝の子、劉子輿は」、一拍置いて続け、「我なり」
劉林はぎょっと眼を見開いて王郎を見上げる。
王郎は静かに続けて曰く「我は、卜者として世に
劉林、はっとし顔を伏せ、
劉林、声も絶え絶えながら答えて曰く「これは
王郎、腕組みして曰く「しかし、難しい。前にも言った通り、劉子輿は、昔、素性を明かして裏切られた故、それ相当な保証が無ければ、衆の前に姿を見せる訳には参りませぬ」
劉林曰く「何とすれば、汝、いや陛下を説得できましょう」
王郎返して、曰く「人と地と天。すなわち劉子輿を信ずる衆があり、
劉林は答えて曰く「心得た、備えん」
そして劉林が去った後、一人座したる王郎は
車に乗り、考えながら自分の館に戻る劉林、車を降り、館につき部屋に戻ると、帯た剣を外す。その平干繆王元の青銅の剣を手に取りじっと見て、最後に吐息して呟く、曰く「
劉林、早速、
王郎は、劉林の用意した場所に
劉林は打ち合わせていた通り問いて、曰く「帝は来られるか」
王郎はその前に問い返して曰く「汝らは皇子劉子輿を信じる者か」
諸衆は全て肯き、王郎は更に問いて曰く「汝ら、劉子輿を見ずして、我の言よりそれを信じるという。
諸衆はまた頷き、王郎は最後に問う「ならば、劉子輿が如何なる人であろうと、汝らは疑わぬと言うのだな」
諸衆は王郎の含みを
王郎曰く「漢の成帝の子、劉子輿は」、一拍置いて続け、「我なり」
諸衆は声を上げ掛けたが、かろうじて押えた。
王郎は静かにその流浪の人生を語り続けて、最後に結んだ、曰く「この様に、我は卜者として世に潜み、時を待った。我を信じ、共に復漢の兵を立てる者を求めて」
劉林、自分に語ったのと全く同じ
諸衆、皆膝を屈する。諸衆、劉林の導くまま王郎を成帝の
時は更始元年、十二月半ば。劉林らは車騎数百を率い、明け方、邯鄲城に入って、古の趙王の王宮に止まり、王郎を立てて天子と為す。劉林を
檄文を飛ばして曰く「各州の刺史、郡の太守に
すなわち、王郎、民が漢を慕うを以て、亡き東郡太守翟義は死なずと言いて、人望に従う。
劉秀陣営で、この変にいち早く気づいたのは、耿純であった。監視していた劉林がふと姿をくらまし、警戒していると、邯鄲の豪族らが城内から消え去ったという報を受けた。耿純は
立った王郎、大司馬李育に兵を率かせ、漳水を見張らせる。しかし、そこには赤眉の影も形も無かった。虚の赤眉、虚の劉子輿を実の帝位と為したのみである。されば、王郎、
男は、また口に出して曰く「賊軍が河向こうにいるとする噂も、
腕を組んで外し、天井を見て床を視る。男は最後に首を振って言う、曰く「この時、誰もが皆噂に流されていた。噂が噂を生み、意外なことを生じた。それのみなるか」
男は、また筆を執るとまた二文字を書く。
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