『俺達のグレートなキャンプ番外編 どら焼き作りの為にすんごい蜂蜜を入手せよ』

海山純平

番外編 どら焼き作りの為にすんごい蜂蜜を入手せよ

俺達のグレートなキャンプ番外編 どら焼き作りの為にすんごい蜂蜜を入手せよ


朝の陽光がキャンプ場のテントサイトに差し込む中、石川は愛用の折りたたみテーブルの上に古めかしい地図を広げていた。その表情は探検家が未知の大陸を発見した時のような、興奮と期待に満ち溢れている。頬は紅潮し、瞳はギラギラと輝いていた。

「よっしゃああああ!今回のグレートキャンプはこれだあああ!」

石川の雄叫びは静寂なキャンプ場に響き渡り、近くでコーヒーを飲んでいた他のキャンパーたちがこちらを振り返る。石川は両腕を大きく広げ、まるで世界を抱擁するかのようなポーズを決めた。

富山は呆れ顔でペグハンマーを握りしめながら振り返る。長年の付き合いで培った直感が、今回もまた石川の突拍子もないアイデアを予感させていた。眉間に刻まれた縦じわが、彼女の心配と諦めを如実に物語っている。

「...また何を思いついたのよ、あんた」

一方、千葉は石川の興奮ぶりに完全に感化され、目をキラキラと輝かせながら駆け寄ってきた。新人キャンパーらしい初々しさと好奇心が全身から溢れ出ている。

「石川さん!今回はどんな奇抜で素晴らしいキャンプなんですか!?」

石川は胸を張り、戦隊ヒーローのような決めポーズを取りながら天を指差す。その指先は微かに震えており、興奮の度合いが窺える。

「聞いて驚けー!今回我々は...どら焼き作りの為に、伝説の『デンジャラス・ゴールデンハニー』を入手するのだああああ!」

富山の手からペグハンマーがガチャンと地面に落ちた。その音が朝の静寂を破り、彼女の動揺を象徴している。

「はあああ?デンジャラス?何それ、名前からして危険じゃない...」

千葉は手をぶんぶんと振り回し、まるで子供がお祭りを前にしているような無邪気な興奮を見せている。

「うおおおお!すげえ!でも蜂蜜って普通にお店で...」

「甘い!甘いぞ千葉!」石川は首を勢いよく左右に振り、まるで師匠が弟子を諭すような表情を浮かべる。「我々がゲットするのは、この森に生息する『キラービー・ゴールデン』という超危険な蜂が作る三種の神蜜よ!」

石川は地図を指差しながら、まるで宝の在り処を説明する海賊のような口調で続ける。

「一つ目は『ゴールデン・エクスタシー』!甘さが普通の蜂蜜の10倍で、一舐めで天国に行けるという幻の蜜!二つ目は『ミラクル・アンバー』!琥珀色に輝き、食べると幸福感で涙が出るという奇跡の蜜!そして三つ目が最高峰『アルティメット・ロイヤル』!女王蜂だけが作れる、この世で最も贅沢な蜜!」

富山は完全に青ざめ、テントのロープを握りしめる手に力が入る。指先が白くなるほど強く握っているのが分かる。

「キラービーって...まさか攻撃的な蜂ってこと?」

「ビンゴー!」石川はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、富山の肩をポンポンと叩く。「さすが長い付き合い!そう、この『キラービー・ゴールデン』は超攻撃的で、縄張りに入った者を容赦なく襲うんだって!でもその分、作る蜜は絶品中の絶品!」

千葉は目を輝かせ、拳を握りしめて小刻みに震えている。興奮で体が勝手に動いてしまうようだ。

「おおおお!冒険ですね!ワクワクしてきました!」

富山は石川の腕をガシッと掴み、爪が食い込むほど強く握る。

「やめなさいよ!危険すぎるでしょ!『キラー』って名前に入ってるじゃない!死ぬかもしれないのよ!?」

石川は富山の心配を手でひらひらと払いのけ、まるで微風を払うような軽やかさを見せる。

「大丈夫大丈夫!特製防護服も用意してあるしー!」

石川がテントから引っ張り出したのは、まるで宇宙服のような白い防護服三着。金属製のヘルメットには小さな通気口があり、全身を完全に覆う仕様になっている。


三十分後、森の入り口で三人は防護服に身を包んでいた。白い宇宙服のような姿は、まるでSF映画のワンシーンのようだ。

石川は防護服の中でも興奮が収まらず、ヘルメットの中で頭を左右に振っている。その様子がヘルメット越しに見え、まるで宇宙飛行士が無重力で踊っているようだ。

「よーし!行くぞお前ら!デンジャラス・ハニー・ゲット大作戦、開始だああああ!」

千葉も同様に防護服を着込んでいるが、慣れない装備のせいでちょっとよろめきながら歩いている。それでも表情は期待に満ち溢れている。

「この格好、なんか面白いですね!まるで異星人の調査隊みたい!」

富山だけは防護服のヘルメットがずり下がり、視界が悪くなっている。歩きにくそうにしながらも、仕方なく二人についていく。

「重いし暑いし...本当にやるの?まだ引き返せるわよ?」

森の中は薄暗く、木々の間から差し込む陽光が幻想的な雰囲気を作り出している。落ち葉がカサカサと音を立て、どこからともなく虫の鳴き声が聞こえてくる。

石川は木の枝をかき分けながらズンズンと進む。防護服越しでも彼の興奮が伝わってくるような力強い足取りだ。

「富山ちゃん、心配しすぎ!人生はアドベンチャーよ!それにほら、あの三種の神蜜でどら焼き作ったら、絶対に史上最高のどら焼きになるじゃん!」

「そうですよ富山さん!きっと伝説のどら焼きができますよ!」

千葉の声にも期待と興奮が込められている。

富山は深いため息をつく。その音がヘルメット内で反響し、諦めの気持ちがより一層強調される。

「はあ...もう知らないからね...」

しばらく森の奥へ進んでいくと、石川が突然立ち止まった。彼の体が硬直し、まるで獲物を発見したハンターのような緊張感を漂わせている。

「おおお!あれだあああ!」

三人の視線の先には、巨大な樫の木がそびえ立っていた。そしてその枝に、まるで巨大な灰色のランタンのような蜂の巣が三つもぶら下がっている。それぞれの巣はバスケットボールを軽く超える大きさで、表面には複雑な幾何学模様が刻まれているように見える。

千葉は感動のあまり両手を合わせ、まるで神聖なものを拝むような仕草を見せる。

「うわあああ!すごい大きさ!こんなの初めて見ました!まるで芸術品みたい!」

富山は一歩、また一歩と後ずさりする。足音がぺたぺたと情けなく響き、完全に腰が引けている。

「でか...こんなの見たことない...」

そして三つの巣の周りを、黄金色に輝く蜂たちが大挙して飛び回っている。その数は優に百匹を超え、ブーンブーンという重低音の羽音が森全体に響き渡っている。キラービー・ゴールデンたちの体は普通の蜂より一回り大きく、その黄金色の体表は陽光を受けてまさに黄金のように輝いている。

石川は防護服の中でガッツポーズを決める。その興奮が防護服越しにも伝わってくるほどだ。

「よっしゃああああ!あの三つの巣に、三種の神蜜が眠ってるんだ!」

しかし、次の瞬間、事態は一変した。

石川が一歩前に踏み出した途端、枯れ枝を踏み折る乾いた音がパキッと森に響いた。

その音を聞きつけたキラービー・ゴールデンたちの羽音が、突然高い警報音のように変化する。ブーンからブブブブブブブという攻撃的な音に変わり、空気が一気に緊迫する。

「あ...やばい...」

石川の声が震える。数百匹の蜂たちがこちらを向き、まるで戦闘機の編隊のように一斉に向かってくる。その光景は圧巻で、黄金の雲が迫ってくるようだ。

「うわああああああ!」

千葉は慌てふためき、防護服の中で必死にもがく。

「きゃああああああ!」

富山の悲鳴が森中に響く。

三人は蜂の大群に囲まれ、まるで黄金の竜巻の中に巻き込まれたような状況になる。キラービー・ゴールデンたちが一斉に突進してくる音はまさに戦闘機の爆音のようで、防護服にガンガンと激突する衝撃が三人の体を容赦なく揺さぶる。

「うわああああ!針が!針が防護服を貫通しそう!」

石川のヘルメット越しに見える表情は、さっきまでの余裕が嘘のように青ざめている。キラービー・ゴールデンの巨大な針が防護服の生地にブスブスと突き刺さり、金属音を立てている。

「きゃああああ!破れる!破れちゃう!」

富山の防護服には既に小さな穴がいくつも開き始めており、そこから蜂の針先がちらりと見えている。彼女は防護服の中で必死に身を縮こまらせ、まるでダンゴムシのように丸くなっている。

「うおおおお!これヤバすぎますよ!まじで命の危険を感じます!」

千葉の防護服にも容赦なく蜂たちが体当たりを仕掛け、ゴンゴンという鈍い音が響く。一匹の特に大きなキラービー・ゴールデンが千葉のヘルメットに正面衝突し、ヘルメットにヒビが入る。

「あああああ!ヘルメット割れた!マジでやばい!」

石川は蜂の針攻撃をローリングでかわしながら必死に巣へ向かう。防護服の背中には既に十数本の針が突き刺さり、まるでハリネズミのような状態になっている。

「うおりゃあああ!死ぬ気で行くぞ!」

蜂たちの攻撃は激化する一方で、三匹の女王蜂級のキラービー・ゴールデンが現れる。その大きさは通常の倍以上で、針の長さもまるで小剣のようだ。

「でけええええ!あれ絶対ボス級だ!」

石川は女王蜂の巨大な針をギリギリでかわし、最初の巣に手を突っ込む。その瞬間、蜂たちの攻撃が更に激化する。

「うわあああ!針が服を貫通した!マジで刺された!」

しかし石川の手に触れたのは、まさに液体の黄金のような『ゴールデン・エクスタシー』だった。その粘度は蜂蜜の概念を覆すほどトロトロで、まるでシルクのような滑らかさを持っている。陽光を受けてプリズムのように七色に輝き、香りはバニラとローズを合わせたような芳醇さだ。

「いってええええ!でもゴールデン・エクスタシー、ゲット!」

続いて千葉が決死の覚悟で二つ目の巣に突進する。蜂の針が防護服を次々と貫通し、千葉の悲鳴が森に響く。

「あああああ!めっちゃ刺される!でも負けない!」

二つ目の巣から採取した『ミラクル・アンバー』は、琥珀色を超えた神秘的な色彩で、容器に入れた瞬間に虹色のオーロラのような光を放つ。その質感はまるでゼリーのようにプルプルと震え、触れた指先に電流のような感覚が走る。

「うおおお!手が痺れる!でも綺麗すぎる!」

最後、富山が涙を流しながら女王蜂の巣に向かう。最大級のキラービー・ゴールデンが富山に狙いを定め、巨大な針で突進してくる。

「いやあああああ!でもみんなの為に!」

富山が決死の思いで採取した『アルティメット・ロイヤル』は、この世のものとは思えない美しさだった。純白に近い金色でありながら、内部に星のような光の粒が無数に浮かんでいる。まるで液体の宝石で、容器に入れると微かに温かさを帯びている。

「完璧だああああ!命がけで三種の神蜜、コンプリート!」

三人は蜂の針でボロボロになった防護服を着たまま、命からがら逃走する。

「よし!撤退だー!」

三人は蜂の大群から逃げるように森を駆け抜け、キャンプ場まで一目散に走り抜けた。


キャンプ場に戻ると、三人は蜂の針でボロボロになった防護服を脱ぎ捨てる。体中に赤い刺し跡があり、まるで戦場から帰還した兵士のような状態だ。

「いてててて...全身針だらけだ...でも価値があった!」

石川は痛みを堪えながらも、獲得した三種の神蜜を見つめて満足そうに笑う。

「私たち、よく生きて帰れたわね...」

富山は疲れ切った表情だが、どこか達成感に満ちている。

「うおお!伝説のどら焼き作りですね!」

千葉は体中刺されながらも興奮を隠せないでいる。

石川は早速どら焼き作りの準備を始める。まず『ゴールデン・エクスタシー』を生地に練り込む。すると生地が信じられないほど滑らかになり、黄金色の光沢を帯びる。生地を混ぜるたびにキラキラと光の粉が舞い上がり、まるで魔法の調理のようだ。

「うわあ...生地がシルクみたいに滑らか...」

次に『ミラクル・アンバー』を餡に混ぜ込む。すると餡がプルプルと震え始め、琥珀色の宝石のような輝きを放つ。スプーンで混ぜるたびに虹色の光が走り、香りは花畑にいるような芳醇さだ。

「餡が生きてるみたい...こんなの見たことない...」

そして最後、『アルティメット・ロイヤル』を仕上げに使う。この蜜を生地に垂らすと、星屑のような光の粒が生地全体に広がり、まるで夜空のような美しさを演出する。

フライパンで焼き上げる過程も神秘的だった。生地がフライパンに触れた瞬間、ジュウという音と共に黄金の湯気が立ち上がり、キャンプ場全体に天国のような甘い香りが漂う。

焼き上がったどら焼きは、まさに芸術品だった。表面は黄金色に輝き、星屑のような光の粒がキラキラと瞬いている。厚みは通常のどら焼きの1.5倍ほどあり、ふわふわと弾力がある。切り口を見ると、琥珀色の餡がとろりと流れ出し、その美しさに三人は言葉を失う。

「完成だああああ!史上最強のどら焼き、『デンジャラス・トリプル・ゴールデン・どら焼き』!」

三人は命がけで作ったどら焼きを前に、まるで聖杯を前にした騎士のような表情を浮かべる。

「いただきまーす!」

一口食べた瞬間、三人の世界が変わった。

まず歯が生地に触れた瞬間、ふわあああっと口の中で溶ける。その食感はまるで雲を食べているような軽やかさで、同時に濃厚な甘さが舌全体を包み込む。『ゴールデン・エクスタシー』の甘さは砂糖の甘さとは次元が違う。まるで天使が奏でる音楽のような甘さで、脳に直接幸福感を注入するような感覚だ。

続いて餡の『ミラクル・アンバー』が口の中で弾ける。プルプルとした食感が舌の上で踊り、琥珀色の風味が鼻腔を抜けていく。その味わいは花の蜜と果実の甘さを合わせたような複雑さで、噛むたびに異なる味が現れる。

そして最後に『アルティメット・ロイヤル』の余韻が訪れる。星屑のような食感が舌の上で溶け、まるで宇宙を口の中で体験しているような壮大な感覚に包まれる。その後味は永遠に続くような贅沢さで、食べ終わった後も幸福感が体中を駆け巡る。

「うまああああああい!これは食べ物じゃない!奇跡だ!」

石川は涙を流しながら第二口目に挑む。

「なにこれ!舌が溶けそう!こんな美味しいもの食べていいの!?」

千葉は感動のあまり立ち上がって踊り始める。

「これ...これは...言葉にならない...」

富山も完全に虜になり、頬に涙を流している。

どら焼きの美味しさに完全に魅了された三人だったが、突然キャンプ場がザワザワし始める。

「おい、あそこから煙が...」

「何か燃えてない?」

他のキャンパーたちが騒ぎ始める。振り返ると、なんと森の方から黒い煙が立ち上っている。

「あ...」

石川の顔が青ざめる。

「まさか...蜂の巣取った時に...」

「火が!?」

富山が立ち上がる。

「あああああ!枯れ枝に蜂蜜が落ちて、それが太陽光で発火したんだ!」

千葉が叫ぶ。

「うわああああ!山火事だあああああ!」

三人は慌ててバケツに水を汲み、森に向かって走り出す。しかし、その時!

「待てー!」

後ろから巨大な影が迫ってくる。振り返ると、なんと先ほどのキラービー・ゴールデンの大群が復讐に来たのだ!

「うわああああ!追いかけてきた!」

「火事を消すか、蜂から逃げるか!」

「両方だああああ!」

三人は水の入ったバケツを持ったまま、蜂に追いかけられながら森の火事現場に向かう。まるでコメディ映画のワンシーンのような状況だ。

「うおりゃああああ!」

石川は蜂に追いかけられながら水をぶちまける。

「きゃああああ!」

富山は蜂を避けながら必死に消火活動。

「これって新しいスポーツじゃないですか!?」

千葉は何故か楽しんでいる。

結局、三人の必死の消火活動と、なぜか消火に協力してくれた蜂たちのおかげで火事は無事鎮火。蜂たちも満足したのか、森の奥に帰っていった。

「はあ...はあ...」

三人は疲れ切ってキャンプ場に戻る。

「でも...」

石川がにっこり笑う。

「最高のどら焼きができたし、大冒険もできたし、今回も大成功だな!」

「そうですね!これぞグレートなキャンプ!」

千葉も満足そうだ。

「もう...懲りないんだから...」

富山は呆れながらも、心の奥では楽しかったと感じている。

夕日がキャンプ場を金色に染める中、三人は命がけで作ったどら焼きを頬張りながら、今日の冒険を振り返る。体中蜂に刺されて痛いが、その痛みすらも良い思い出になりそうだ。

「次はもっとすごいことしようぜ!」

石川の言葉に、富山と千葉は顔を見合わせて苦笑い。

こうして、『俺達のグレートなキャンプ』の危険で愉快な一日は、美しい夕焼けと共に幕を閉じるのだった。

【翌日・総合病院】

三人は病院のベッドに横たわっていた。全身に赤い腫れと包帯を巻いた姿は、まるでミイラのようだ。

石川:(包帯だらけの頭をガシガシ掻きながら)「いててて...でも最高のキャンプだったなあ」

千葉:(点滴を受けながらニコニコ)「そうですね!また行きましょうよ!」

富山:(腕に巨大な湿布を貼りながら)「もう絶対やだ...」

そこへ、白衣を着た中年の医師が険しい表情でやってくる。その眼光は鋭く、三人を見下ろす視線は完全に呆れと怒りに満ちている。

医師:(カルテをバンと音を立てて置く)「あなた方ねえ...」

三人がビクッと身を縮こまる。医師の声は低く、威圧感たっぷりだ。

医師:「蜂に刺された箇所、石川さん47ヶ所、千葉さん52ヶ所、富山さん39ヶ所。」(眼鏡をクイッと上げる)「一体何をやらかしたんですか?」

石川:(冷や汗をかきながら)「あの...キャンプで...蜂蜜を...」

医師:(声を荒げる)「キャンプで蜂蜜?普通蜂蜜はスーパーで買うものでしょう!?なぜわざわざ蜂の巣に!?」

千葉:(手をひらひら振りながら弱々しく)「いや、その...すんごい蜂蜜が欲しくて...」

医師:(頭を抱える)「すんごい蜂蜜って...あのですね、あなた方が遭遇したのは『キラービー・ゴールデン』でしょう?」

三人が頷く。

医師:(ため息をつきながら)「あれは市が駆除対象に指定している超危険種なんですよ!毒性も強いし、攻撃性も異常に高い!普通なら死んでもおかしくない!」

富山:(青ざめる)「し、死ぬって...」

医師:「幸い防護服を着ていたから軽傷で済みましたが、もし素肌だったら確実に救急車でした!」(石川を指差す)「特にあなた、アレルギー反応一歩手前でしたよ!」

石川:(汗だらだら)「え...そうなんですか...」

医師:(立ち上がって歩き回りながら)「それに!蜂毒による腫れと痛みは一週間は続きます!仕事にも支障が出るでしょう!」

千葉:(おそるおそる)「あの...でも美味しいどら焼きができて...」

医師:(振り返ってにらみつける)「どら焼き!?どら焼きの為に命を危険に晒すんですか!?」

三人は完全に縮こまる。

医師:(深呼吸して冷静になる)「まあ...結果的に軽傷で済んで良かったですが...」(三人を見回す)「今後は絶対に、絶対に危険な虫には近づかないでください。約束できますか?」

石川:(小さい声で)「はい...」

千葉:(同じく小さい声で)「はい...」

富山:(ホッとしながら)「はい!絶対に!」

医師:(カルテを片手に立ち去りながら)「まったく...最近のキャンパーは何を考えてるんだか...」

医師が去った後、三人は顔を見合わせる。

石川:(小声で)「でも...あのどら焼き、めっちゃ美味しかったよな...」

千葉:(同じく小声で)「そうですね...また食べたいです...」

富山:(二人を睨みつける)「だめええええ!絶対だめ!もう懲り懲りよ!」

石川:(ニヤリと笑う)「でもさ、今度は防護服をもっと頑丈なのに...」

富山:「聞いてない!聞いてないからね!」

富山の叫び声が病院中に響く中、石川と千葉はこっそりと次の冒険について相談し始めるのだった。

窓の外では、夕日が三人の包帯姿を照らし、またしても懲りない『俺達のグレートなキャンプ』メンバーの姿があった。

【完】

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『俺達のグレートなキャンプ番外編 どら焼き作りの為にすんごい蜂蜜を入手せよ』 海山純平 @umiyama117

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