小説。 しせい。

木田りも

しせい。

小説。 しせい。


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 それは崩れると、よくないのだ。

ピンと張りすぎていても、だらしなく崩れるのもいけない。ほどよく、ちょうど良いところを続けることがとても重要なのだ。そしてそれが何よりも大変であることが、この問題の核の部分である。頑張ろうと思うこと、必死に生きること、

忘れてしまうであろう時間も懸命に生きること。それはとても素晴らしく良いことではあるが、

長く続けること、長期的に物事を見る上では、

頑張りすぎるのも問題なのだ。


↑(過去の価値観をここに書いた。

僕はこの価値観で今回の小説を書く。

これは全て大きな間違いであるということを言いたい。そう。

これは間違えて生きていた時間の話です。)


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 作戦を考えていた。自分という物をどう生き永らえさせるか。

存在価値的な寿命を少しでも延ばすにはどうすれば良いか。いつまでも旬でいることはなかなかに難しいことである。


 楽しいっていう感情は作れない。

生まれる物である。実際には生まれたものでなければ本当の意味で楽しいにはならない。


 たった一瞬の「楽しい」のために、

そこまで頑張れる人がいるのが不思議だった。

楽しいには、楽しくない、が必要なのだ。

それならば、楽な方が絶対に良い。だって、

字は一緒だから、大体似たようなものでしょう?


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今日はなんでもない日だ。なんでかというと、

上司が休みだから仕事でミスしても間違えても、もみ消せる。クレームとか明日に残ってしまう

ミス以外はノーカウントにできる日。こんな日を楽しないでいつ楽するんだって思う。仕事には

メリハリが必要だ。メリとハリ、山と谷、

オンとオフ、やるかやらないか、

生きるか死ぬか。

世の中一つ一つは簡単な2択だ。

でもそれがあまりにも膨大すぎて複雑に見えてしまっているのが現状だ。言うか言わないか、

気を遣うか遣わないか、好きか嫌いか、

やるかやらないか。たったそれだけ。

それだけだから適当に流して構わないでしょう?明日には頑張りますから。明日には。

そして、ミスも何もなく今日を終えて、家に帰り、なんてことない今日を終える。


ただ最近、寝る時にうつ伏せでないと寝れなくなった。


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 気がつくと、終わり方がわからない夢を見ていた。永遠とも思える時間。

そこで終わらない仕事をしていた。

やることで溢れているのは、現実も夢も一緒だ。生きてる間も僕が死んでからも、

永遠に、やることは存在し続ける。

そんなことをぼんやり考えながら、夢の中で淡々と作業を進める。終わりがない、見えないということは救いなのか、苦しみなのか。


ほら、またいつもみたいに繰り返して考えている。だから変わらないんだよ。ほら、今ぽちぽちスマホに書いてる君だよ。


 そう言われてこれを入力してる手を止めた。

自分の最大のファンで最大のアンチは、自分だ。夢から…………覚めない。


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覚めないまま、起きて、曖昧なまま現実に帰ってくる。夢なのか現実なのかわからない移ろいゆく日々を送りながら、1日が流れる。何気ない1日。現状維持は退化だ。どこかの誰かが言った。

現状維持するので精一杯なのに。だから出世とか上に上がるとか尚更嫌だ。程よいところで程よく認められて、それなりをキープしたい。そのためには、ある程度周りより上に上がらないと実現しないことをまだ知らない。真剣に頑張れる時間が減った。どうせ自分より頑張ってない人だっているんだ。そう思ったら馬鹿らしい。サボってしまえ!!

夢だから構わない。何したって構わないんだ。

でも怒られた時に感じる痛みはどこまで行っても現実でそれにはいつまで経っても慣れないもんだ。やっと夢から覚める頃、僕は目が冴える。

毎日は夢のようだ。実感も触感もないまま移ろいゆくもの。噛み締めて踏み締めて、遠くからパトカーのサイレンが聞こえて、忘れられて、忘れさせて、また夢を見る。ほんの少しの気分で、今からお散歩中になる。触れない触れない触れない1日には!ここで、止まるのだ。そういえば昨日初めての経験をした。だからといって自分じゃなくても大丈夫だと思うけどこれこそなんかおもんないままの時間だ。ほら、予測は全て外れた。おやすみ。


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 少しずつズレた。完成させなければならない。今あるべき姿を。自分がやりやすい生きやすい、〜〜しやすいにするために。出世とか偉くなるとか将来への希望よりも、長く細く生き残るための戦法。期待されずでも放っておかれもしないまあまあ。あいつがいれば困らない便利グッズ、だけど都合のいい存在ではない。適度にほどほどな完璧。難しい塩梅を乗りこなせば残りは安牌だ。流せばいい。そのための晒し?あれ?麻雀?はは。まあ、そんな感じであそびのように乗り越えれればいい。それを完成させなければ。完成ってなんだ。どうなれば完成と言える?ゴールは?終わりは?何が違う?退職する時の幸せ?死ぬ時の満足度?評価は誰がするんだろ?え、ちょっと待って?僕は誰?名前なんてないのかもしれない。これって終われる?完成し切らなくても、ゴールテープを切れなくても終わりまで続かなくても。


「終わりを作らなくても良いの、だってこれは、小説なのだから」


作者の介入。声が聞こえた。だから、僕は僕でここでただ思えば良いのか。こんなふうに。


「もう少しだけ続きます。」


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 夢から覚めた。明日が始まった。

なんでもない日の次の日。なんでもある日。

姿勢を整えてカッコつける。たった2〜3日しか続かない、ビシッとした僕がいる。

なんだか久しぶりに見た。後ろ髪が少しだけ立ってて笑った。完璧は作れる。すぐに崩れてしまうけど。背筋を伸ばし、大きく伸びをして、荷物を持ち、玄関の扉を開けた。





再び玄関に戻り、今日捨てようと思ってた生ゴミを持って、2回目の扉を開けた。





玄関の扉の閉め忘れを思い出して、また戻ってきた。






「終わりです。」

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