第2話
門野は玄関先に出て待った。
完全に外は夜の色に包まれていた。
約束通り電話から30分少しで坂東の姿が見えた。
ご無沙汰してます、と会釈する門野。
「久しぶりだな。さっそくで悪いんだが」
「ちょっと待ってください」
口元に指を一本立て坂東の言葉を遮った。
そのまま坂東の背中をさらりと撫でるとどこから現れたのか小さな蝶が飛んでいった。
敵なのか味方なのか誰かの式がずっと張り付いていた。
蝶はすぐに姿を消し、門野は再び坂東に視線を戻す。
「門野、お前に急ぎで伝えたいことがあったんだ。出来れば安全な場所がいいんだが」
「このままうちに入ってください。誰かにつけられてる坂東さんと外出歩いたらロクなことにならなそうですし」
坂東は確かにな、と苦笑いで返事をする。
門野邸に入ると坂東はリビングのソファに座った。
静かな中で時計の秒針がやけに大きく響いて聞こえる。
「やっぱり門野みたいな優秀な奴を辞めさせたのは陰陽寮にとっては痛手だった。辞めてから1年、主軸が無くなって崩壊寸前だよ」
よく見ると坂東は少しやつれていた。
一緒に働いていたころは恰幅が良く豪快な人柄で繊細とは無縁な男だと思っていた門野にとって、弱音を吐く坂東を初めて見た。
先程からキッチンでコーヒーを淹れていたもう1人の男が近寄って来て坂東にコーヒーカップを渡す。
「あ、どうもすみません」
「それはうちの式です。気にしないでください」
どこからどう見ても20代青年にしか見えないが、式を具現化して動かすことが出来る。
これが数少ない陰陽師として門野が惜しまれる理由の1つ。
式の男はにこりと会釈をしてまたキッチンへと戻って行った。
「そういえば安倍さんがどうしたんですか?」
「時間無くて切羽詰まってるから先に門野には話しておかないとって思って。ここ大丈夫だよな?」
キョロキョロと周りを見回す坂東。
さっきのこともあってか誰かに聞かれてるんじゃないかと心配をしていた。
「部屋の中は結界を張ってるし、庭には魔除けの木もいくつか植えてます。安心して話してください」
そうか、と少しだけ坂東の表情が緩む。
コーヒーに口をつけたあと、ゆっくりと話し始めた。
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