第49話『"その場所"に、向かう』

情報源不明のメール

受信日時:2025年10月20日 03:33:33

送信者:unknown

件名:(なし)


みてるひとへ

さいごのページ

ほんものが ある

まってる


【記者のメモ】

このメールが届いて、眠れなくなった。

送信元は解析不能。

でも、知っている。

これは、招待状だ。


朝までネットを探し回った。

「神ちゃん 最終ページ 保管」

「神ちゃん 原画 聖地」

「神ちゃん ファン 私設」

何も出てこない。


でも、ある場所で見つけた。

昔の掲示板の、消えかけたログ。


【2ちゃんねる過去ログ(2003年)】

523 :名無しさん:03/05/12 02:15

神ちゃんの原稿、どこかに残ってるって聞いた


524 :名無しさん:03/05/12 02:18

>>523

都市伝説だろ


525 :名無しさん:03/05/12 02:45

マジレスすると、ある

山の中

でも、場所は教えられない

呼ばれた奴だけが行ける


526 :名無しさん:03/05/12 02:47

>>525

kwsk


527 :名無しさん:03/05/12 02:51

>>526

夢で見る

準備ができた奴は夢で呼ばれる

目印は木

神ちゃんのポーズしてる木


528 :名無しさん:03/05/12 02:52

デンパ乙


【地理的記憶の断片】

ある日、夢を見た。

そこには神ちゃんが映っていた。

目覚めた後、必死にメモした。


・山道(舗装されていない)

・標高は低め(1時間くらいで登れる)

・杉林

・小川の音

・右手に古い鳥居(朽ちかけている)

・左に折れる細い道

・Y字のわかれ道を左

・岩場を越える

・開けた場所


なぜこんなに詳細に覚えているのか。

行ったことがある?

いや、ない。

でも、知っている。


【母への電話(10月25日 09:15)】

記者:「小学生の頃、山にハイキング行った?」

母:「何度か行ったわよ。覚えてない?」

記者:「杉の木で、両手広げたような形の」

母:「……」

記者:「お母さん?」

母:「あんた、どうしてそれを」

記者:「知ってるの?」

母:「4年生の夏。友達と一緒に行きたいって言って」

記者:「連れて行ってくれた?」

母:「ううん。場所がわからないって言って、諦めたのよ」

記者:「でも、今わかる気がする」

母:「……行くの?」

記者:「行かなきゃいけない気がする」

母:「気をつけて。それと……」

記者:「何?」

母:「帰ってこれなくなるかもしれない、なんて思わないでよ」


【地図アプリでの検索】

県内の山をすべてチェック。

航空写真で、杉林を探す。

見つけた。

いや、見つけたんじゃない。

思い出した。

■■山。

自宅から車で1時間。

廃れた登山道がある。

ストリートビューで確認。

登山口に、確かに鳥居が。

朽ちかけた、赤い鳥居。

これだ。


【出発前の音声メモ(10月25日 18:00)】

「これから、行ってきます」

「どこに? 自分でも、よくわからない」

「でも、行かなきゃいけない」

「最終ページがあるという場所」

「もしかしたら、何もないかもしれない」

「でも、それでもいい」

「だって、呼ばれたから」

「誰に?」

「……神ちゃんに」

「いや、違う」

「私自身に」

「ずっと前からの、私自身に」


【新規メール(編集長宛・送信済み)】

明日は取材で山に行きます。

電波が届かないかもしれません。

連絡が遅れたらすみません。

では。


【手帳の最後のメモ】

夢の中で「場所」を思い出した。

いや、教えてもらった。

準備はできた。

心の準備も。

明日の朝、出発する。

じゃあ、"行ってくるよ"、……神ちゃん。

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