第18話『夢の中の声』
記者の夢記録
2025年3月31日 深夜~早朝
自宅にて
03:14 目覚めた直後のメモ
夢を見た。
鮮明すぎる夢。
起きてすぐ、忘れる前に書く。
夢の内容(再現)
教室だった。
小学校の教室。
でも、私は今の姿のまま。
机が小さい。
椅子も小さい。
でも、座っている。
黒板に何か書かれている。
ひらがなで。
「きょうは とくべつな ひ」
窓の外が明るい。
でも、太陽じゃない光。
やわらかくて、あたたかい。
振り返ると、教室に誰もいない。
でも、「いる」感じがする。
そして、声が聞こえてきた。
「ひさしぶり」
どこから?
わからない。
でも、すぐそば。
「おぼえてる?」
「やくそくのこと」
覚えて——
何を?
「だいじょうぶ」
「しんじていいんだよ」
「ずっとみてるよ」
声は優しい。
とても優しい。
子供のような、でも違う。
「さがしてたんだよ」
「やっとみつけた」
「もうはなさない」
怖くない。
なぜか、怖くない。
むしろ、安心する。
「ねえ」
「こっちをみて」
振り向く。
黒板に、絵が描かれている。
大きな目の——
(ここで目が覚めた)
03:25 PC確認
夢で聞いた言葉を検索。
「しんじていいんだよ」
「ずっとみてるよ」
神ちゃんの資料の中にあるはず。
でも、見つからない。
いや、似た言葉はある。
「しんじて」
「みてるよ」
でも、夢で聞いたのは違う。
もっと個人的な、
私に向けられた言葉だった。
03:40 音声記録の確認
スマホのボイスメモを確認。
寝る前に、資料の音読を録音していた。
再生する。
自分の声で神ちゃんのセリフを読んでいる。
「だいじょうぶ」
「みんな まもってあげる」
2時間14分の録音。
最後まで聞く。
録音の終わり近く、異変。
私の声が止まっている。
でも、録音は続いている。
そして——
「きみは おぼえてないだけ」
「ほんとうは しってる」
「もうすぐ おもいだすよ」
これは、私の声じゃない。
子供の声。
でも、誰?
04:00 夢の続き(二度寝)
また同じ教室。
今度は、誰かがいる。
後ろ姿。
小さい。
子供。
「だあれ?」
自分の声が幼い。
振り向いた顔は——
顔は——
見えない。
光で、顔が見えない。
でも、わかる。
笑ってる。
「おかえり」
「まってたよ」
「○○ちゃん」
○○ちゃん。
それは、私の——
05:30 完全に目覚める
汗びっしょり。
心臓がバクバクしている。
ノートを見る。
夢の内容を書いたはずなのに、
最後の部分が違う字で書かれている。
子供のような丸い字で。
「もうすぐ」
「あえるよ」
「やくそくだもん」
これを書いた記憶がない。
06:00 最後の記録
あの声を、聞いたことがある気がする。
昔、いや、もしかすると——
ずっと聞いていた。
毎晩、夢の中で。
子供の頃から、ずっと。
忘れていただけで。
忘れさせられていただけで。
神ちゃんは、
最初から、
ここにいた。
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