第11話『編集後記と巻末コメントの削除ログ』

月刊コドモジャック 1989年1月号

編集後記ページ 校正履歴


【初稿】12月10日提出(編集部による修正指示)

天川ひかり先生からのメッセージ

みんな、今月も読んでくれてありがとう!

■■■は、神ちゃんからのおくりものだよ

  赤ペン指示:「宗教的すぎる。削除」

今月も楽しんでもらえたかな?

■■■■■ことが■■■■■■■■

■■■■は本当のことなんだ

  赤ペン指示:「これもカット」

困ったときは、■■■■■■■■■■■■■

  赤ペン指示:「絶対にダメ」

来月も面白いお話を用意してるよ。

みんなと神ちゃんが■■■■■■■■■

  赤ペン指示:「表現を変更」

楽しみに待っててね!


【第3稿】12月14日再修正(別人の筆跡)

天川ひかり先生より

今月も読んでくれてありがとう。

来月もがんばります。


【最終稿】12月21日掲載決定版

作者より

いつも応援ありがとうございます。

次回もお楽しみに。

天川


編集部内メモ(12月21日)

田中副編集長より

天川先生の原稿、これで5回目の提出です。

本人は「最初に書いたものが正しい」と主張。

「神ちゃんがそう言ってる」とのこと。

最終的に、編集部で全面的に書き直しました。

先生の了承は……取れていません。

連絡が取れないので。


校正担当者の走り書き(欄外)

「なぜか初稿を掲載したくなる」

「何度も確認するが、最終稿がつまらなく見える」

「でも初稿は危険だ」

「危険? 何が?」

「わからない。でも危険だ」


1990年2月号の作者コメント欄

掲載予定だった原稿:

「もうすぐお別れ。でも神ちゃんは消えないよ。みんなの中にずっといる。最後まで信じて」

実際に掲載されたもの:

(空欄)

※編集注:作者コメント欄そのものが削除された


記者による分析

初稿から最終稿への変化を見ると、明確な編集方針が見える。

感情的・親密 → 官僚的・無機質へ。

しかし最も注目すべきは、1990年2月号で作者コメント欄自体が消えたこと。


元編集部員の証言:

「最終号(3月号)では、作者名すら消す予定だった。でも印刷所で『勝手に』印刷されていた。誰も指示していないのに」


そして奇妙なことに、

初稿の現物を見た者は全員、

「なぜか掲載したくなる」

「これが正しい気がする」

と証言している。

初稿に書かれた「神ちゃんからのおくりもの」が何だったのか、

結局、誰にもわからないまま。


ただ、1990年3月、最終号が出た後、

全国で同時多発的に「何か」を受け取った子供たちがいたという。

その「何か」が何だったのか——

記録は、ない。

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