第5話『作者への最初の質問状』
月刊コドモジャック 1989年9月号
✨天川ひかり先生への質問コーナー✨
P.64「まんが家さんにきいてみよう!」より抜粋
質問その1
ペンネーム:神ちゃん大好きっ子(東京都・8歳)
Q:先生! 神ちゃんは本当にいるんですか?
天川先生の答え
いい質問ね! 神ちゃんはね、信じる子のところには、ちゃんといるよ。
夢で会えたり、困った時に声が聞こえたりする子もいるみたい。
みんなも神ちゃんを信じてたら、きっと会えるよ!
質問その2
ペンネーム:まさくん(千葉県・10歳)
Q:神ちゃんの力はどこから来るんですか?
天川先生の答え
神ちゃんの力はね、みんなの「信じる心」から生まれるの。
だから、たくさんの子が神ちゃんを信じれば信じるほど、
神ちゃんは強くなって、もっとみんなを守れるようになるんだよ。
質問その3
ペンネーム:心配なママ(保護者)
Q:子供が神ちゃんの真似ばかりして、現実と区別がつかなくなっているようです。大丈夫でしょうか?
天川先生の答え
お母様、それは素晴らしいことです! お子さんは神ちゃんと心が通じ合っている証拠。
現実? でも神ちゃんは現実にいますよ。
大人には見えないだけ。
お子さんの純粋な心を、どうか否定しないであげてください。
質問その4
ペンネーム:クラスの人気者(埼玉県・9歳)
Q:友達が神ちゃんを信じてくれません。どうしたらいいですか?
天川先生の答え
それは残念だね。でもね、無理に信じさせる必要はないよ。
ただ、覚えておいて。
神ちゃんを信じない人は、
この漫画を読まない方がいいかもしれない。
だって、信じない心で読んでも、神ちゃんの本当の声は聞こえないから。
信じる子だけが、本当の物語を読めるんだよ。
編集部による注意書き(小さい文字)
※天川先生のコメントは創作上の演出です。
※実際の宗教活動とは一切関係ありません。
読者の反響(次号10月号より)
「先生の言葉でかくしんしました!
神ちゃんは本当にいるんだ! ともだちにもおしえてあげます!」(東京都・7歳)
「信じない子とはあそびません。
先生の言うとおり、信じない子にはわからないんですね。
もう話しかけるのやめました」(神奈川県・10歳)
「読むのをやめさせました。
これは漫画を超えています。即刻連載中止を要求します」(保護者多数)
編集部の対応メモ(内部資料)
9月号発売後、以下の反響:
賛同する手紙:2,847通
クレーム:342通
書店からの追加注文:通常の3倍
天川先生への編集部からの要請(9月25日):
「次回から表現を少し柔らかく——」
天川先生の返答(9月26日):
「神ちゃんが、このままでいいって言ってます」
記者による追記
この号を境に、読者の二極化が始まった。
「信じる子」と「信じない子」。
その区別は、やがて学校や地域にまで波及していく。
そして問題の核心は、作者の発言にある。
「神ちゃんを信じない人は読まないで」
これは単なる作品への没入を促す言葉だったのか。
それとも——
天川ひかり氏は、この後まもなく公の場から姿を消す。
最後に残した言葉は、編集部への手紙にあった一文。
「神ちゃんが、そろそろだって」
その意味は、今もわからない。
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