第136話 初配信 ― 世界が聴いた夜

 配信開始から、まだ一分も経っていないのに、

 コメント欄のスクロールは止まらなかった。


【コメント欄】

リスナーA:声、想像以上に透明……

リスナーB:半年待ってよかった(涙)

リスナーC:え、これ新人!?

リスナーD:BGMいらないレベルで聴ける


 アリアは、画面の向こうで微笑む。

 緊張はまだ胸の奥に残っている。

 でも、不思議と心地よい。


(……届いてる。ちゃんと)


第一曲:《Celestia》


 静寂を切り裂くように、イントロが流れた。

 澄み切ったピアノと、わずかに滲む電子音。


♪ 迷いの夜を抜けて

光を探した――この声で


 声が、空気を震わせる。

 透明なのに、芯がある。

 まるで“祈り”をそのまま音にしたような響きだった。


視聴者・SNS


【#夜宵アリア初配信】

リスナーA:生歌……マジで鳥肌

リスナーB:声の伸びがやばい

リスナーC:息継ぎまで綺麗って何

リスナーD:もうプロだろこれ

リスナーE:いや、もう“V”の概念超えてる


【トレンド】

1位:#夜宵アリア初配信

2位:#Celestia

3位:#沈黙から声へ


控室 ― ステラリウム視点


 レナがモニターを見ながらぽつりと呟く。


「……これ、デビュー配信の完成度じゃないよね?」


 メアは無言で頷き、そして小さく笑う。


「でも、わかる。

 “本気”で世界を獲りに来てる声だ。」


 彼女たちの中に、競争心と同時に、

 確かな尊敬が芽生えていた。


スタッフルーム


「音声チェック完了……波形、ノイズゼロです」

「歌も完璧。間奏の呼吸すら計算されてる」


 サウンドエンジニアの一人が椅子に沈み込み、苦笑した。


「――半年でここまで仕上げてくるか。

 正直、怖いくらいだ。」


 隣でプロデューサーが腕を組む。

「化け物だよ。声で戦う天才だ。」


エンディング


「最後まで聴いてくださって、ありがとうございます。

夜宵アリア――これから、あなたの夜に寄り添っていきます。」


 最後の言葉に、ほんの少しの震えが混ざる。

 でもそれは、緊張ではなく“実感”だった。


【コメント欄】

リスナーA:ありがとうアリア

リスナーB:一生推す

リスナーC:沈黙の姫が、声で泣かせにくるなんて

リスナーD:世界が変わった夜


【ステータスボード:夜宵アリア】


反応速度:MAX(固定)

戦術理解Lv:6

キャラ操作精度:9

空間認識力:8

感覚統合:Lv2

【表現力】:Lv1 → Lv2

【トーク力】:上昇中


(ボーナスポイント残:1)


“沈黙を越えて、声は世界を包む。”

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