第112話 沈黙の歌 ― 初テイク

 録音室の空気は、張り詰めた糸のように静かだった。

 誰も息を潜め、ブースの中の少女――夜宵アリアを見つめている。


 ヘッドホン越しに流れるイントロ。

 ピアノの単音。

 わずかな呼吸。

 そして、無音。


(……この静けさ、懐かしい)


 “無言姫”だった頃の自分が、ふと脳裏をよぎる。

 声を出さずに、戦って、勝ち続けた日々。

 言葉はいらないと思っていた。

 でも――いまは違う。


(もう、沈黙だけじゃ足りない)


 マイクの前で、唇がわずかに震える。

 指先が、震える心拍と同じリズムを刻んでいた。


【Verse 】


「……ねぇ 聞こえる?」


 スタジオの空気が変わる。

 わずかな囁きのような声が、世界を震わせた。

 それは“声”というより、心音に近い音だった。


 モニター越しに見ていたユリウスが、思わず前のめりになる。


「……この入り、やっぱり天才だな。

 “無音”を音楽にできる人間なんて、そういない」


 スタッフの一人が、息を呑んだままモニターに釘付けになる。

 誰も喋らない。喋れない。


【Chorus 】


 ドラムが入る瞬間、アリアの瞳がわずかに光を帯びた。

 押し殺していた想いが、爆発する。

 ピアノとストリングスの中で、彼女の声が舞う。


「沈黙が 歌に変わる――」


 その瞬間、モニターの音圧が跳ね上がった。

 ヘッドホンを外したスタッフの頬に、鳥肌が走る。


「……っ、やばい。

 声の伸びが“祈り”みたいだ。涙出そう」


【Bridge(間奏)】


 音が途切れる。

 心臓の鼓動と呼吸音だけが響く。

 彼女は目を閉じ、無言のまま、もう一度息を吸った。


(あのとき、言えなかった言葉。

 “ありがとう”も、“ごめん”も――全部、ここに)


【Final Chorus】


「声は風になり、沈黙を越えて――」


 歌い切った瞬間、アリアはゆっくりと目を開けた。

 光に満ちたブースの中、涙が一筋だけ頬を伝う。


 ユリウスが小さく息を吐いた。

「……完成じゃない。

 でも、本物がここにいる。」


 スタッフ全員が、立ち上がることもできずに、ただ拍手を送った。


終わりの静寂


 アリアはマイクに顔を寄せ、そっと囁く。


「……聞こえた、かな」


 モニター越しのユリウスが、満面の笑みを浮かべた。

「いや、届いたさ。

 “沈黙”ごと、世界に。」


【ステータスボード:夜宵アリア】(更新)


反応速度:MAX(固定)

戦術理解Lv:6

キャラ操作精度:9(維持)

空間認識力:8(維持)

感覚統合:Lv2 → 〈歌と感覚の同期〉


新スキル:「共鳴感覚」Lv1

 歌声に感情を乗せることで、聴く者の心を揺らす。

 “沈黙の歌”によって自然開放。


________________________________


【あとがき】

ちょっと歌詞作る才能はなくてすみません

だれか助けてw

変態作曲家の方よろしくお願いします!!!

合っているのはバンバン採用で使わせていただきます

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