第83話「機材チェック開始」
控え室の緊張
企業スタジオの扉を開けた瞬間、胸が高鳴った。
整然と並ぶモニターやマイク、最新型PC、遮音された壁。
ここが――夜宵(やよい)アリアの“声”が世界に届く舞台。
「ようこそ。今日から半年間はここがあなたの拠点になります」
案内役のスタッフが柔らかく笑う。
私は小さくうなずいた。
かつて無言姫として、PCと小さなマイクだけで戦っていた自分。
今は、企業の資金と技術に支えられた“本物の環境”を目の前にしている。
(……逃げ道はない。ここで成長するしかないんだ)
機材チェック
席に座り、ヘッドセットを装着する。
センサーが反応し、モニターに“夜宵アリア”が現れた。
水色の髪、透明感のある瞳。自分の仕草に合わせて瞬き、呼吸する。
「まずは音声からいきましょう」
スタッフがキーボードを叩く。
「マイクテスト、どうぞ」
「……こ、こんばんは」
音がスピーカーから響く。
澄んだ声が、部屋を震わせた。
「すごい。ノイズがほとんどない」
「ただ、少し感度が高いですね。S発音の時に割れそうです」
スタッフ同士が小声で話し合い、設定を微調整する。
初めての声合わせ
「次は表情と合わせてお願いします」
私は少し息を整えた。
画面に映る“夜宵アリア”を見つめ、声を紡ぐ。
「夜宵アリアです。よろしくお願いします」
唇が動き、瞳がきらめき、ほんのり頬が染まる。
自分で操作しているのに、まるで別人がそこに生きているようだった。
「……っ」
スタッフの一人が息をのんだ。
「完成度、高すぎじゃないですか?声とモデルが自然に一体化してる」
「これなら本番配信でも即戦力ですね」
別のスタッフが笑う。
「まあ、あとは本人の慣れ次第。半年あるから、たっぷり準備できますよ」
不意のトラブル
その瞬間、モニターが一瞬フリーズした。
「えっ、落ちた?」
「回線が不安定……?いや、機材の接続か」
スタッフが慌ててケーブルを差し直す。
私は小さく笑って、ぽつりとつぶやいた。
「……練習中でよかった」
その一言に、スタッフが一瞬黙る。
「……練習中でも、この声は絵になるな」
「トラブルすら映える。やっぱり持ってるなあ」
主人公の内心
(無言姫の時は、沈黙そのものが力だった。
でも今度は、声がすべてを繋ぐ)
モニター越しの“夜宵アリア”が微笑む。
まるで「大丈夫」と励ましてくれているように見えた。
(半年後――この姿で、世界を驚かせる)
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ポイント振り分け
(今日の練習で気づいた。
声を扱うのは簡単じゃない。だからこそ――強化する価値がある)
【獲得ポイント:3pt】
声の魅力 Lv6 → Lv7(2pt振り分け)
配信コミュ力 Lv3 → Lv4(1pt振り分け)
【ステータスボード:更新】
身体能力 Lv7
身体操作 Lv6
戦術理解 Lv7
反応速度 Lv8
幻影分身(デコイ) Lv2
剣盾キャンセル術 Lv3
声の魅力 Lv7
歌唱表現 Lv5
配信コミュ力 Lv4
カリスマ性 Lv5
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