第7話 怪物と眼鏡 後編
後ろから現れた羊間は話を続ける。
「で、なんか落ちてた資料を読んだ感じここの怪物は人間のフリが
「……!」
「んーと…ライちゃん、これなんて言ったの」
「あーそっかわかんねえよな、あの女の子は怪物なのかって言ってる」
「…。」(ナイス通訳!の意)
「C-3P○じゃねーんだぞあたしは」
羊間は話を戻す
「で、あの子が怪物かはわかんないんだけど確かめる必要はあるってわけ」
「なーるほどね」
「何してるのお姉ちゃん達、早く隠れた方が良いよ?」
少女は依然こちらに呼びかけている。入道は出来るだけフレンドリーに話しかける
「あーいやちょっと色々聞きたい事があってよ」
「なあに?」
「お嬢ちゃん名前は?」
「わたし、フユ」
「OK、ここにいる理由は?」
「パパが傘を忘れて、それを届けに来たら変なピンクのブヨブヨに襲われたの」
「OKさっき聞いた通りだ。他に人はいる?」
「いっぱいいたけどいなくなっちゃった」
「迷子ね、今って西暦何年?」
「1996年」
「また時代違うパターンか」
「これで本当にわかんのか?ユウヒ」
「んーとりあえず続けてライちゃん」
入道は質問を続ける
「ここにはどれくらい居る?」
「1週間と2日」
「女の子一人で?」
「ここに食べ物がいっぱいあったの」
ぽたり、と水滴の音が響く。入道は質問を続ける。
「あたしが手に持ってるの何か分かる?」
「スマホ」
「羊間先生スマホっていつから?」
「たしか1993が最初らしいけど90年代はまだポケベルとかじゃない?」
羊間は訝しみながら答える。
ぽたり、とまた水滴の音。音は少女のいる扉の向こうから聞こえる。入道は質問を続ける。
「フユちゃん、怪我とかはしてない?」
「私は平気だよ」
「じゃあ足元の赤いのは何?」
ぽたり、ドアの下から赤い液体が覗く。
「ここに食べ物がいっぱいあったの」
「それはさっき聞いた」
「いっぱいいたけどいなくなっちゃった」
「それもさっき__」
「わたしフユ」
「おい、どうした?」
「早く隠れないと危ないよお姉ちゃんたちここには怪物が居るの」
「……繰り返してる?」
花曇の気付きに嫌な悪寒が3人の背後を走る。
「怪物はわたしはうゆはピンクでブヨブヨで他に人はフユうゆで食べ物でいっぱい居たけどパパが傘を忘れていなくなっちゃって1996年と1週間と2日とフうゆで__」
ぞりり、びしゃ
水の入った袋を引きずるような音が扉の向こうで鳴る。
花曇達は3人は後退りをする。
扉が完全に開き、顔だけを出していた少女は繋がらない文章を呟きながら廊下に歩み出る。
その時には花曇達は走り出していた。
逃げながらそれの姿を見た。
それは人の身体ではなかった。
積み上がったピンク色の肉の山。腫れ上がった丸い泡の様なこぶが幾つも吹き上がっていて、そこから毛がまばらに数本だけ生えている。そこから節のある細長い胴が上に伸び、腹は黄ばんだ白、芋虫の様な沢山の短い足が蠢いており生理的嫌悪を掻き立てる。その銅から枝の様な細い腕が伸び別の肉塊を掴んでいる。フユのものであろうか。血の滴る音はそこから鳴っていた。胴と同じく節があり長く伸びた首に、繋がらない言葉を呟き続ける少女の顔がついていた。その瞳の中でさらに小さな目が四つこちらを見つめている。
「_うゆ。」
それだけ言い終わると、怪物は静かに逃げる花曇達を見つめていた。
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つづく
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