第8話 日常と氷の競演
秋の風が校庭を吹き抜ける頃、雪乃はいつものように授業を終え、校庭に立っていた。結衣と一緒に歩きながら、周囲の生徒たちの視線を感じる。
「雪乃ちゃん、今日も目立ってるね」
結衣は小さく笑い、雪乃も軽く肩をすくめる。
「うん……でも、少し慣れてきたかも」
その日の放課後、玲奈が声をかけてきた。
「雪乃、練習しようか。昨日のカード大会で感じたこと、もっと高めたいんだ」
雪乃は頷き、二人で校庭の片隅に向かう。互いに微笑みを交わすだけで、自然と空気が凛と張りつめる。氷の力を持つ者同士、静かな競争心が心地よく流れる。
雪乃は指先で氷の結晶を操る。玲奈は空中に細かい氷の造形を作り、雪乃の凍結時間の隙間を見極めようとする。
「やっぱり……あなたは時間を操れるんだ」
玲奈の声には尊敬と好奇心が混ざる。雪乃も、玲奈の氷の純度と精度に驚きつつ、微笑む。
「でも、私も負けないよ」
小さな挑戦心が、二人の間で軽く火花を散らす。
その日の夕方、学園の廊下で小さなトラブルが発生する。落ちた資料が廊下に散らばり、掃除の先生が困っている。雪乃は指先に力を込め、氷の薄膜で資料をまとめて元の場所に戻す。
「わっ……!すごい……」
周囲の生徒たちが驚きの声を上げる。雪乃は少し照れながらも、内心では能力が日常に役立つ喜びを感じていた。
夜、雪乃は日記を開く。
「今日も玲奈と練習した。力は違うけど、互いに高め合える存在だと思う。日常の中でも少しずつ使えるようになってきた」
指先の冷たさを確かめると、微かな光が指先で瞬く。能力の成長とともに、自分の世界が広がっていく実感がある。
窓の外、沈む夕陽が校庭を赤く染める。雪乃はそっと手を広げ、氷の結晶を小さく浮かべる。
「これからも……もっと高めていこう」
小さな決意が胸に灯る。日常の中で、非日常の力を少しずつ操る雪乃。学園での毎日は、凛とした氷のように、静かに輝き始めた。
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