第2話 魂は愛によって
矢田光臣は目を覚ますと、そこには先に逝った家内のみつ子やみつ子の弟の彰君がいたので驚く。
「2人とも!ここはどこなんだ?」
目を丸くして、周囲をキョロキョロしている。
すると、どこかの休憩室みたいな場所で、寝かされてる人がいて、その前には人が集まっている。
みつ子は死んだ時より、若い時に近い外見だ。私もだが30代くらいだろうか?
彰君も。
「あなた。先に逝ってごめんなさい。」
柔らかく微笑むみつ子に、光臣はポタポタと涙を流す。
「本当だよ。みつ子」
光臣は涙を拭う。
あんなにも焦がれたみつ子の笑顔を見て、もう一度声を聞きたいと思ってたみつ子と再会出来て、ここはどこかはどうでも良くなった。
義弟の彰君が口にした。
「光臣さん、ここはあの世の世界なんだ」
「あの世。やっぱり私は死んだのか」
孫娘の誕生日にこちらに来てしまったことに、少しばかり悔いが残る。
「大丈夫よ。紗枝ちゃんは強いわ。」
今、言葉にする前にみつ子は私の考えが分かったのだろうか。
「ここはね。思ったことが分かるんだ。信頼しあってる魂同士なら尚更、行きたいと思った場所さ瞬時に行ける。それに現世にいた時より身体も楽なはずだよ?」
彰君の言葉に目を見張る。
そういえば、膝も腰も痛くない。補聴器をしないと満足に聞こえなかった音もクリアだ。
「すごいな。ここは」
シンプルに感動を覚えた。
「あなたのお父さんやお母さんも来てるわよ。久しぶりに皆で飲みましょう。」
光に包まれながら、すううと二つの魂が現れた。
「久しぶりだな。光臣。」
「私達の家族では一番の長生きよ。頑張ったわね。光臣。
今年の始めに広子がこちらの世界に来て、私の子どもたちが同じ世界に来たのね。」
「親父、お袋」
親父とお袋は家に飾られた遺影の写真の通り、和服である。
(死というのは現世だと悲しい別れだと思っていた。だけど、あの世では再会の場なんだな。)
少しばかり笑みを浮かべる。
「光臣さん葬儀は1週間後だって、室内墓所だから一気に納骨までやるみたいだ。僕の家族も参列するって、さっき地上を見に行ったら、光臣さんが10日で、僕が死んだのが14日だから、家族が僕が光臣を呼んだんじゃないかと話ていたよ」
笑いながら話している。
「確かに命日が彰君と近いな。」
笑いあう面々。
みつ子が私の手を取る。
「色々とこっちを案内するわ。」
光臣が笑みを浮かべる。
「久しぶりのデートだな。」
「ええ」
美しい花畑。綺麗な川。川のせせらぎ。
小鳥の囀り。
心が穏やかだ。
(みつ子は後年足腰を弱くして、車椅子生活になっていた。
こうやって一緒に歩くことが出来るなんて夢のようだ。みつ子が死んだ時、亡骸に口づけを交わしたのを思い出す。)
みつ子は私の意識が伝わり頬を赤くしてる。
《意識がある時にしてよ。》
その意識が伝わり、光臣は優しくみつ子の腕を引いて抱き寄せる。
「また、会えて嬉しいよ。みつ子」
「私もよ。光臣さん」
瞼を閉じて口付けを交わす二人
二人の魂がキラキラと輝く。
魂は愛によって光をました。
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