第4話 異変なんだろうか

翌日。

何事もなく起きて、でも何か視線を感じた。

まあ気のせいだろうと思って特に気にせず準備をして学校に行こうと思ったら、ポストにあの真っ黒な封筒が入っていた。

早くないか?

周りに誰もいないのを確認して慌てて封筒を開けて中を見ると、同じように真っ黒な便箋が入っていた。

開いて見てみると、こう書いてあった。


      『通知』


『まじないは成功しました、破るな』


破るな?

昨日届いた手紙には確かに句読点のようなものがあったのは覚えている。

その続きということだろうか。

でも、成功している。

これで、木村透もいなくなる。

警告のような文字を気にすることなく、そのままカバンの中に封筒をしまった。

部屋に戻るのも面倒だったからな。


学校に行くと、最初に燃やした遠藤光一は夜中に焼死体で見つかったと朝のホームルームで先生が言っていた。遅かったな。

でもおかしなことに、昨日燃やしたはずの木村透は普通に学校に来ていた。

確かに名前を書いて燃やしたはずなのに。

まじないが効かなかったのかな。

でも手紙には成功と書かれていた。

矛盾していないか?

どういうことなんだ。

授業中、そして家に帰るまで。

頭の中はずっと疑問で埋め尽くされていた。


家に帰ると、またあの真っ黒な封筒がポストに入っていた。

今日はまだまじないをしていない。

なんで入ってるんだろう。

部屋に戻って朝に届いていた封筒を引き出しにしまってから、今さっきポストから出してきた方の封筒を開く。

中にはいつもの真っ黒な便箋と、白い紙に赤で色々書かれたお札が入っていた。

お札をとりあえず机の新聞紙の上に置いて、便箋を開く。

書かれていたのは、


   『通知』


『四度呪札共半紙燃可』


まるで呪文のような漢字の羅列。

思わず「なんだこれ」と呟いた。

〈四度〉は、四回目ってことか?

これから俺がやろうとしてることを知ってる?

〈呪〉は確実にまじないのことだろうし……。

〈札〉は間違いなく一緒に入っていたお札のことだろう。

〈共半紙〉ってことは、半紙と一緒に、

〈燃〉で、燃やす……………?

〈可〉は………なんだ?

燃やせるよ、的なことか?

そうだとしても、このお札とあのまじないの半紙を一緒に燃やしたところで何になるんだろう。

………無視していいか。

少し考えたけど、お札は封筒にしまって、その封筒は机の引き出しにしまった。


新聞紙の上に半紙を敷いて昨日の使い回しの墨汁を筆に染み込ませる。

そしてあいつの名前を書いた。


〈木村透〉


昨日のまじないが効かなかったからあいつは今日も学校にいたんだ。

お陰で今日も俺は顔を合わせるたびに暴言吐かれたんだぞ。

許せない。

許さない。


「死んでくれ………!」


昨日よりもっと。

恨みを込めて。

しっかりと。

皺なんて気にせずに。


今ある限りの藁をカバンに入れて半紙をファイルに入れて、マッチも入れて。

神社に行った。

やっぱり草は生えていなかった。

すぐに藁にマッチで火を着けて半紙を燃やす。

水のことはもう思い出しもしなかった。

全て燃え尽きるまでは見守らず、すぐにその場を離れた。


半紙に書かれた名前は、まだ見えていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る