第3話 ズレていく

翌日。

また何事もなく起きて何事もなく学校に行って、でも少し変なことがあった。

変なことというか、昼休みに教科書を出そうと机の中を探ったらあの封筒が入っていた。

あの真っ黒で郵便番号の枠だけが赤で書かれている、あの封筒。

流石にその場で中身を見るのは気が引けて教科書に挟んで隠した。

周りにバレてしまえばルールを破ることになってしまうし、問い詰められるかもしれない。

それだけは避けたかった。

そして昨日まじないで燃やした田中雄太は焼死体となって見つかったと朝のホームルームで先生が話していた。

原因や犯人はまだ分からないらしい。

このまま分からないままで終わって欲しい。

最初に燃やした遠藤光一は昨日と同じく体調不良で欠席………まだ見つかってないみたいだ。


帰ってすぐに部屋で封筒の中身を確認した。

昨日のと同じ真っ黒な封筒に真っ黒な便箋。

内容は、


     『通知』


『まじないは成功しました、』


昨日と同じ内容だ。

ただ一つ気になるのは最後に句読点のような「、」に見える何かがあることだ。

フォントを貼り付けているような正確な字で書かれているのに、まさか手書き?

だとしたら誰が書いてるっていうんだ。

そもそもこれは……………

そこまで考えてやめた。

まじないが成功しているなら俺にとってこれ以上は気にする必要のないことだ。

また便箋を封筒に丁寧にしまって、机の中にある昨日の封筒の上に重ねた。

二通目。

これも、大事に、大切に、とっておこう。

また、そう思った。


今日は三人目を燃やしに行く。

封筒をしまってすぐに既に敷いてある新聞紙の上に半紙を置いて紙コップの中に入れたままの俺の血液入り墨汁を筆に染み込ませた。

昨日の使い回しでも多分大丈夫だ。

周りが言っていたルールには新品の墨汁や新鮮な血液じゃないと駄目だなんてのはなかったし、きっと大丈夫なはずだ。


〈木村 透〉


今日は取り巻きの中でも特に執拗に虐めてきた奴。俺を見かければ必ず何かしら暴言を吐き捨てて行くような奴だ。

許せない。


「死んでくれないか」


ただその一心で書いていく。

一筆一筆。

しっかりと。

恨みを込めて。

皺にならないように。


藁がそろそろ少なくなってきた。

足りるかと思ってたのに。

無くなるの早いな。

明日帰りにでも買ってこなきゃな。

そんなことを思いながら神社に向かった。


昨日、一昨日と同じ場所に向かうと、やっぱり草は生えていなかった。

あれだけ周りは草が生い茂っているのになんでここだけぽっかりと草が生えていないのか。

不思議ではあったけどちょうどいい広さで都合がいいし、考えないことにした。


藁を積んで、マッチで火を着ける。

本当に、よく燃えるなぁ。

カバンからファイルを出して、ファイルから半紙を出す。

そして火の中に投げ入れる。

とてもよく燃える。

ついぼーっと眺めてしまう。

なんだかこの作業にも慣れてきた。

また水忘れたなぁと思い出すけどどうでもいいかと思考を放棄する。

早くここから離れないと。


俺はその場を離れた。


火は、燃え盛ったままだった。

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