朝焼けのニライカナイへ――祈りが結ぶ琉球神話ファンタジー
- ★★★ Excellent!!!
この物語、本当に胸に沁みました。琉球の青い海に囲まれた小さな島で、伝説と現実、孤独と出会い、祈りと愛――そのすべてが静かに溶け合って、読んでいるだけで潮の香りや夜明けの空気まで感じられるようでした。
ユリハの心に少しずつ人間らしさを宿していくカナトの姿が、まるで波に磨かれる小石のようで、ただの“器”だった彼が「誰かを大切に思う心」を知っていく過程には、こちらも静かに胸を打たれます。
嵐蛇との戦いの場面は圧巻で、祈りと奇跡の光景は目に浮かぶよう。二人の口付けの瞬間は、夜明け前の海がほのかに光り出すときのように清らかで、新しい朝への希望を感じました。
村人の拍手や長老の涙も、信じることや祈ることの大切さをしみじみ思い出させてくれて、読み終えた後も心にあたたかい余韻が残ります。
「大切な人と一緒なら、どんな困難もきっと越えられる」――そんな想いを、優しくそっと手渡してくれるような作品でした。人生にそっと光を灯してくれる、そんな物語を探している人にぜひ読んでほしいです。