第8話 四人でボドゲ①

 


 放課後。

 

 俺と政則だけのゲーム・コンピュータ同好会に、俺の義妹である唯花と部活クラッシャーの篠木が見学にやってきた。

 

 篠木に関してはまだ確定はしていない話だが、ここまでの要素が揃うと流石に部活クラッシャーだと考えざるを得ない。何が目的なのかは分からないけどな。


 そして話すのもなんだからという理由で、四人で『生涯ゲーム』というボドゲをやる事になり、政則からゲームはスタートしていく。。


「じゃあ、俺から行くぜ~! えーと、3、ね。最初からイマイチだな」


 政則の出目は『3』。

 

 このゲームのルーレットは1~10までの出目があり、その出目に応じて自分の駒を動かしていくゲームとなっている。そして止まったマスで色々なイベントが起き、最終的に所持金が一番高い奴が勝ちのゲームだ。


「えーと? テストで赤点を取ってしまい、3000円マイナス? いきなり3000円マイナスかい」


 政則が止まったのはバッドマス。バッドマスでは、基本的に不幸なイベントが起きるマスとなっている。自分の所持金が減るイベントが多めかな。


 というか、何でテストで赤点とってお金減るんだよ。違法なゲームでもやってる? テストで何か賭けてない?


「政則の止まったマスさ、ゲームだから仕方のない事だけど、テストで赤点とって更にお金減るの理不尽すぎる」


「まぁ、ゲームですからね。でも勇雅先輩がそうツッコみたくなる気持ちも分かりますよっ」


 俺の言葉に、篠木が笑いながら返してくる。

 

 軽い自己紹介をしただけなのに、いつのまにかナチュラルに名前呼びになっているのが少し怖い。


「じゃあ次は私ですね。よいしょっ」


 政則の番が終わると、次は篠木の番。篠木の最初の出目は『5』だ。


「うわ~私もバッドマスだ。部活で部員と大喧嘩をし、反省文を書く事に。残念ながら、一回休みになっちゃいました」


 政則と同じく、篠木もバッドマスに。


 しかもイベントがタイムリー過ぎる話なので、俺も政則も何も言えずにただただ黙ってしまう。


 まさかゲームにもトラップがあったとは……。き、気まずい……。



 篠木の番が終わると、次は唯花の番。


 唯花は俺たちの様子に違和感を感じたのか、俺たちに疑いの目を向けながらもルーレットを回す。


「……7。テストで良い結果を残し、皆から褒められる。5000円プラスだって」


 唯花が止まったのはラッキーマス。バッドマスと反対で、所持金が増えるなどの良い事が起きるマスだ。一気に形勢逆転……みたいなマスもある。このゲームでは、常にラッキーマスに止まっていきたい。


「流石は俺の妹だ。偉いぞ唯花」


「何で勇雅が誇らしげなんだよ。このシスコンが」


「おにぃ。ちょっと気持ち悪い」


「お、おう。そうか。そうか……」


 俺への態度が冷たすぎてぴえん。唯花も政則も本当に酷いものだぜ全くよ。


 義理の妹とは言え、俺の妹を大切に思う気持ちは本物だ。唯花は俺の事を嫌っているような感じだが、俺は別に唯花の事は嫌いではない。


 いつかは唯花と仲良くなりたいと思っているし、もっと話したいと思っているシスコンお兄ちゃんだよ! 悪い!?


「はい、次はおにぃの番でしょ」


「お、おう」


 いよいよ俺の番に。俺は唯花に促され、ルーレットを回す。俺の出目は『9』だ。


 両親も忙しくてこういう会もした事はなかったし、唯花とも家ではあまり話さないから、こうして唯花と一緒にゲームしているのは何か新鮮な気持ちになる。普通に楽しいな。


 いつかは家族でもこういう会をしたい……と思いつつ、俺は自分の駒を動かして止まったマスを確認する。


「えー、平凡な学校生活を送る。特に何もなし。いいいいっや、何かイベント起きろやっ!」


 あまりにも意味のない不要なマスすぎるだろ!

 

 このゲームの製作者、イベントが思いつかなくていくつかのマスを適当に作ったに違いない。


「だから勇雅はダメなんだよ。人生は波乱万丈! 人生は常にギャンブルよ」


「私は。そういう勇雅先輩の普通なところも好きだけどなぁ」


「しょうがない。おにぃはおにぃだからね」


 いや皆さ、俺への扱い適当すぎない? そろそろ本当に泣いちゃうよ?


 まぁ、政則はいつもの感じのふざけた様子だからまだ分かる。問題はあとの二人だ。


 篠木は相変わらずといった感じで、俺の事を褒めてくる。流石に察しが悪い俺でも察するほどの思わせぶりな態度だ。土屋の件でもいっぱいいっぱいだというのに、勘弁してほしい。


 部活クラッシャーの件から考えても、男子を弄ぶ、自分に注目させる事が篠木の目的なのだろうか? 

 

 うーむ。土屋の件とは似て非なるもの、と考えた方が良さそうだな。それぞれに悪い思惑とかありそうだけど、今のところは何もないから深く考える必要はない、か。


 あと、唯花は俺の事を本当に何だと思ってるの? おにぃはおにぃなの? おにぃって何なの?


 頼むからおにぃををチクチク言葉にしないでぇぇえぇえ! それにおにぃがおにぃだから、どこぞの政治家みたいな支離滅裂な言葉になってるから!




◇◇◇



 ゲームは少し進み、政則が一番乗りで最初の分岐マスへ。この分岐マスから色々なルートに分かれていくらしい。


「よっし。輝かしい未来のために良いコースに行くぜ!」


「政則先輩のために、ちょっとルール確認しますね。えー、ルーレットを3回回して、その出た目の合計でコースが決まるらしいです」


「ふむふむ。コースは……全部で4つか」


「ですね。進学コース、就職コース、エリートコース、茨の道コースの4つです」


 どうやら、コースはルーレット3回の出目の合計で決まるらしい。あたりとされているエリートコースは、出目の合計が25以上が必要とかなり厳しい。


「じゃあ回すぞ」


 政則は3回回し、結果は「3」「2」「1」で合計は「6」。結果的にかなり低い数字になってしまった。


「うわ最悪! これ茨の道コース確定やん。勇雅助けて」


「エリートが当たりなら、茨の道は明確なはずれっぽいな。コースが決まったから、もう一回ルーレットを回しての止まったマス次第じゃね?」


「かもな」


 政則はもう一回ルーレットを回し、出目は『5』。政則は恐る恐る自分の駒を動かしていく。


「なになに。宇宙人が侵略してきて、地球人代表として戦う事となった。重傷で3回休み!?」


「ぷぷぷ。俺の事を笑ったばちが当たったな政則」


「テストプレイしていない定期。順調だったのに、急にクソゲーになりやがった」


「思ったよりも茨の道すぎて笑った」


 マスごとのイベントの振れ幅デカすぎるやろ。急なファンタジー展開やめなさいよ。転生もののライトノベルやないんやから。それに迷走しすぎて打ち切り前の漫画みたいになってるじゃねぇか。


「ごめん勇雅。同窓会には行けません。俺、地球人代表として戦う事になったから」


「おう頑張れ。俺はエリートとして生きていくから」


「茨の道で待ってるぜ」


「親友に言われたくない台詞すぎて草」




 まだまだゲームは続く――






 


 


 


 

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もう恋愛なんてしないと思っていた俺でしたが、どうやら各所ですれ違いが起きているらしいです 向井 夢士(むかい ゆめと) @takushi710

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