第2話 酔っ払いなコンビニ強盗

 バイトしている時間帯というのは暇を潰せるし、給料も貰えるし素晴らしいことだと思っている。それは単に俺が他に時間の使い方が分からないという事と職場環境が悪くないからという面が大きいだろう。


「門脇先輩、ソワソワしすぎっすよ」


「そりゃあ緊張するだろ?」


「まぁまぁ焦らず頑張りましょう?今日は一日中僕が裏方の作業しているんでレジよろしくで~す」


「了解だわ」


 俺は門脇先輩にレジの仕事をさせて、約束通り品出し担当ということになった。あれほどの美女であるビッチ姉さんを正面で拝めるのだから、幸福でしかないだろう。そして、俺は門脇がビッチ姉さんにまた食事でも誘うと聞いており、何故だか少し嬉しいという気持ちが心の内にあった。


 門脇先輩は、レジを担当してから一時間程経過しても依然とソワソワした様子を抑えきれずにいた。お客さんの商品のバーコードをスキャンしようにも外を何度もチラチラと見ているせいか上手く読み取ることが出来ず数人の行列が出来るほどであった。


(流石に俺も対応した方がいいかな……いやぁ、でもなぁ)


 暇そうにしている店員である俺を怪訝な目つきで数人の客が見つめてきた。申し訳ないという気持ちで一杯であるため、流石に良心が少し痛む。俺は小さく溜息を吐いてから門脇の隣のレジへと小走りで向かった。


「お待ちのお客様、こちらへどうぞ~」


 不機嫌そうな表情を隠しきれない社会人のハゲたオッサンがカゴを強く置いて俺の方を睨んだ。カゴの中には多くのビール、そしてつまみ、惣菜が入っている。金曜日ということもあり仕事のご褒美ということなのだろうか。


 カゴの中身を見て相手の私生活を想像するというのもコンビニバイトの好きなポイントの一つであった。誰かに話すとドン引きされそうな内容であるから、話はしないが。やはり金曜日は酒が売れやすいということも社会人たちのお陰なのだろうな。そんなことを妄想しながら、隣の門脇の比ではない速さで商品を捌いて行く。


――ブォン


 特徴的な車の音が微かに聞こえたので、一瞬チラリとコンビニの外を見てみるが駐車場にはビッチ姉さんの車は無かった。しかし、道路にはゆっくりと運転して此方の様子を伺っているドライバーであるビッチ姉さんがいた。どうやら、人が混んでいるので待っているようだ。ならば、バイト戦士である俺は素早く業務をこなすだけである。


 気合を入れた俺は門脇先輩よりも数段早く商品のバーコードを読み取っていく。最早、どこにバーコードあるかなど探さなくても分かるのだよ!ほぼ同時期に入ってきた門脇先輩よりも仕事は出来るのだッ!


 五分ほど経過しただろうか。門脇先輩と俺は、数人待ちの行列を全て無くすことが出来た。門脇先輩は申し訳なさそうな表情をしながら俺の方を見やってくる。


「悪い、助かったわ」


「別にいいっすよ。貸しですからね」


「分かったよ。今度、ジュースでも奢ってやるよ」


「ゴチになります」


 そして夜の九時を回ったころだ。いつものようにビッチ姉さんが、無表情で来店してきた。普段着でないかのような黒のドレスのような肩を全て露出させた服を着ていた。あんなの美人でなければ似合うことはないが、ビッチ姉さんは俺が出会った中でも最高峰の美女あるので無論似合う。少し見惚れながらも視線を商品へと戻して、陳列作業へと戻る。


「いらっしゃいませっ!」


「……」


 待ちに待った時間であるので、張り切った様子の門脇先輩は大きな声で来店の挨拶をする。ここまで大きな声の挨拶を俺は聞いたことがなかったので、少し面白くて声には出さないが笑ってしまった。ビッチ姉さんも驚いたのかチラリとレジの方向を見やって直ぐに視線を戻す。そして、ヒールの音を鳴らしながら毎週行く場所――コンドーム売場へと向かう。


「いらっしゃいま……ッ!」


「おい! 早く金出せや! ぶっ殺すぞ!」


(おっと……コンビニ強盗さんですか……マニュアル読んでおけば良かったな。確か……忘れた。門脇先輩の臨機応変に対応するだろ。俺はバレないように隠れとこ)


 ニット帽を被りマスクをつけた小太りのオッサンが、レジにいる門脇先輩へと怒鳴りつけるようにして包丁を向けていた。そんな中々ないであろう事件現場に遭遇してしまったビッチ姉さんも恐怖の表情を浮かべている。そんな中、俺は強盗犯から隠れるように音を殺して移動する。


(……ふらついている。酔っぱらっているのかな?まぁ、門脇先輩もさっさと金を出すだろ。最初コンビニに入るときの研修でも店長にもそう言われていたしな)









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毎週コンドームを買いに来る年上美人に性癖を歪まされてしまった! 藤本茂三 @sige02

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