第11話 下水道と言う新たな戦場
温水洗浄器の成功により、ウォル=水原たちは町でちょっとした有名人になっていた。しかし、彼の心は次なる課題に向かっていた。
「下水処理システムの構築」
現在の町では、汚水は垂れ流し状態だった。これが疫病の根本原因である。
「でも、下水って何?」
リリィが首をかしげた。この世界では下水道という概念自体が存在しない。
「汚れた水を適切に処理して、川や土壌を汚染しないようにするシステムです」
ウォル=水原は簡単な図を描いて説明した。
「家庭から出た汚水を集めて、浄化してから自然に返す。これができれば、病気の発生を劇的に減らせます」
「すごいアイデアだけど…」エルナが心配そうに言った。「規模が大きすぎない?個人でできるレベルを超えてるわ」
確かにその通りだった。下水道は都市インフラの一部であり、個人事業でどうにかなるものではない。
「まずは小規模から始めましょう」
セオドアが提案した。
「一軒の家の汚水処理システムを作って、効果を実証するんです」
「それなら魔法で浄化槽を作れるかもしれません」
ウォル=水原の目が輝いた。前世の知識では、浄化槽は微生物による分解を利用した汚水処理システムだった。
「微生物による分解…この世界にも同じ原理が使えるはず」
早速、町長のアルバートに相談することにした。
「下水処理?」
町長は興味深そうに聞いた。
「はい。汚水を適切に処理すれば、疫病の発生を大幅に減らせます」
「それは素晴らしい。ぜひ試してみてくれ」
「ただし、実験には場所が必要です」
「私の屋敷を使っていいよ」
思わぬ申し出だった。町長自らが実験台になってくれるという。
「本当にありがとうございます!」
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