第2話俺の友達は2
ご覧の通り、彼女は品行方正・成績優秀で、校内に強い発言力を持つ、「校内一可愛い女子」(略して「校女」)三位の善人だ。
では、俺みたいな陰キャでありながら健全で、ごく普通の男子高校生が、なぜ彼女と知り合いなのか?
そのわけを、ゆっくり話そう。
物心ついた頃から、彼女はいつもそばにいた。
「ねえ、見て!カブトムシだよ」
「おお、でけえな」
「見て見て!アリさんだよ」
「おお、ちっせえな」
俺と彼女の家は隣同士で、両親たちは俺たちが生まれる前からの知り合いらしい。
だから両家族で食事をする機会も多かった。
「ご子息は優秀ですね、またテスト一位とか」
「ご令嬢だって負けてませんよ」
「ええ」「ははは」
宴席の大人たちは、よく自分の子供を自慢の種にした。正直、こういう空気は苦手だった。
社交辞令だけの、本物の人間関係なんかじゃない。
だから、こんな時はいつもこっそり抜け出して本を読んでいた。
「何してるの?」
幼気(いたいけ)な栗色の長髪を揺らして、彼女が近づいてきた。
「本読んでる」
「何の本?」
表紙を見せてやった。
「どれどれ……うえっ、『人間の闇の本性』?それ何?」
見て分かるだろ、ってツッコミたくなったが、困惑した顔の彼女をよそに、さっきまで読んでいたページを開き直した。
「暗い感じ……ねえ、クッキー食べる?」
彼女はまたもや、どこからか開封済みのクッキー箱を取り出した。
話の変わりようが早い。しかもさっき食事したばかりだろ、思春期の女子の食欲は恐ろしい。
「……もらう」
「はい」
彼女が差し出した、かじった跡がついたクッキーを見て、俺は箱から別の一枚を取り出した。
✕✕✕
「プッ」
「そこの生徒、何を笑っているの?」
授業中だった小原先生が突然立ち止まり、鋭い目つきで俺を睨んだ。
おかげでクラス全員の視線が俺に集中し、東山さんまで「こいつ何やってんの」って顔をしている。
期待に応えて、俺は立ち上がり、できるだけ平静な声で言った。
「クッキーのことを考えてました」
「クッキーが何か可笑しいのか? それより、君、この問題を解きなさい」
彼女は黒板に書いたばかりの問題をトントンと叩いた。
幸い問題は難しくなかったので、俺はすぐに解けた。呆れたようにため息をつく小原先生は、「放課後職員室に来なさい」と念を押すと、俺を座らせた。
「あと何分で放課後だ……」と考えながら窓の外を見ると、サッと顔を戻して真面目に授業を受けているふりをしている東山さんの姿が目に入った。ったく、せめてお前はちゃんと授業聞けよ。
「✕✕君、また上の空じゃないの?」小原先生が俺の横に来て、教科書で頭をトンと叩いた。
頭をさすりながら、俺はとぼけた口調で心から謝った。クラスメイトたちも笑っていた。
初秋の日没は冬ほど早くなく、夏ほど遅くもない。つまり、木々の影が限りなく伸びた時、その日は終わるのだ。
放課後。
同じ制服を着た生徒たちが(もちろん男女でデザインは違う)ぞろぞろと校門へ向かい、同性のグループが肩を組んだりして堂々と通行の邪魔をしている。
それに比べれば、男女一組の「リア充チーム」の方がまだ静かだ。だが彼らが放つ輝くオーラ(交通安全の妨げ)は危険極まりないと思う。
鞄をまとめながら、楽しそうにおしゃべりするクラスメイトが次々と机の脇を通り過ぎるのを見て、俺は思わずため息をついた。とはいえ、追いかける様子もない。停学処分なんだから。
その時、鮮やかな栗色のポニーテールが視界に飛び込んできた。東山さんはもう鞄を背負い、身をかがめて俺の耳元でささやくように言った。
「正門で待ってるからね」
「先に帰らなくていいのか?小原先生の説教、結構長引きそうだけど」
「だったら、そんなに待たせないでよ」彼女は怒ったふりをして頬を膨らませると、さっと俺の机の脇から離れ、自慢げに栗色のポニーテールを揺らしながら後ろのドアから出ていった。
教室にはもう誰もいなかった。おそらく、俺のことを気遣って、わざわざこのタイミングで話しかけてくれたんだろう。そう思うと、また深いため息が出た。電気を消し、ドアに鍵をかけ、俺は「ラスボス部屋」(職員室)へと向かった。
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