もしあの日、国境を越えられたなら

そのifを思わずにはいられません。

理性でその衝動を留めた主人公の判断は恐らく正しい。
きっとその先に未来はなかった。

ただ、そんな大人の分別をかなぐり捨てて、心のままに行動できていたなら——
きっと主人公は10年間、その問いを何度も反芻したことでしょう。

そうしてローザンヌの湖畔で、ようやく心にひとつの決着をつけることができた。

それは終わることのない問いへの答えではありませんが、救いではあったように思います。

心に残る物語を、ありがとうございました。