第二話 その12
折戸花子は押し黙って、下を向いた。お母さんと呼ばれた女性は、自転車から降りずに娘の顔を伺う。
「どうしたの?」
「ただの帰り道だよ」
折戸花子は先ほどまでの威勢を失い、緊張したような面持ちで答える。
「そちらの人たちは?」
「高校の先生。……たまたま一緒だったから」
「そうなのね」
折戸花子の母はやおら自転車から降りて、娘の後背で呆然としていた三人に声をかけた。
「いつも娘がお世話になっております」
即座に応答したのは堀田教師だった。
「折戸さんのお母様でしょうか?」
「ええ」
「こちらこそ、いつも大変お世話になっております」
「いえいえ。先生方もこの辺に住んでいらっしゃるのですか?」
堀田教師は高井教師に一瞥を向けたのち、「いえ」と即答した。
「今度学校関連のイベントがありまして、玉林の方に用があったのですよ」
「こんな時間に、歩きで玉林までですか?」
「玉林行きのバスがもう少し先にありますよね。それで行こうかと思っていました」
「んー、この時間じゃ一時間に一本くらいしか無いかもしれませんよ。行けても帰って来れるか……」
「あ、そうなのですね。ではまた日を改めましょうか」
堀田教師は後ろの二人に視線を送り、無理やり頷かせる。そして、再度折戸花子の母の方を向いた。
「お騒がせしました。お買い物中のところすみません」
折戸花子の母は驚愕して首を傾げる。
「なぜ買い物中と分かったのですか?」
「顔に書いてありました」
「どういうことでしょう?」
折戸花子の母が自らの顔に怪訝そうに触れる。
「いえ、なんでもありません。娘さんとはあまり似ていないと思っただけです」
「は、はあ……」
折戸花子の母は苦笑いをしながら、娘の方を見て、「暗いから気をつけて帰りなね」と告げる。
「では、私は失礼しますね」
そして、自転車で走り去ってしまった。ここまでの間、折戸花子当人は無言を貫いていた。堀田教師は彼女の姿を見て、手塚ジュニアに次のようにお願いをする。
「すみません、折戸さんをお家まで連れて行ってあげてください。何やら戸惑っているようなので」
手塚ジュニアは「ラジャです」と告げ、二人の教師に別れを告げた。堀田教師は去り際、当惑した少女に忠告をする。
「自分自身の悪意を、ちゃんと客観的に見てください。それを飼い慣らせるのは、自分しかいませんよ」
堀田教師は高井教師を連れて立ち去った。残された少女に、手塚ジュニアが柔和に声をかける。
「相変わらず説教くさいババアっすね。帰りましょ、せーんぱい」
「シンプルに片付く頭脳の魔法 VS モグラゴミうんちクラブ」 山川 湖 @tomoyamkum
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