第13話 今はまだ......
「要くん、今日はお弁当何作って来たんですか?」
「今日はな...... 」
いつものように、お昼を食べるのに屋上へ向かおうとしていると、夜空が扉の前に立っていた。
(アイツ、こんなところで何してんだ?)
「あれ、夜空さんが私たちのクラスに来るなんて珍しいですね。誰かお友達でも居ましたか?」
「やっほ〜愛鈴。今日はね、一緒にお昼を食べたい友達が居たから来たんだ?」
「そうでしたか。もしよろしければ、そのお友達。私が呼んできて差し上げましょうか?」
「いや。気持ちだけ受け取っとくね。私の目当ての人ならもう見つけたから。」
夜空は、要を指差すとニコッと笑った。
「えっ!。お二人って知り合いだったんですか?」
「この前たまたま知り合ってね。それで、良かったら一緒にお昼食べない。要?」
「愛鈴も一緒で良いなら、俺は構わないが......。愛鈴、夜空が一緒でも良いか?」
「別に構いませんよ?たまには賑やかなのも良いんじゃないですか?」
たまには大人数で賑やかな食事をすると言うのも、良いのかもしれないな。
「決まりだね!。じゃあ二人がいっつもお昼を食べてるところに連れて行ってもらえるかな?」
「わかりました。では、着いて来て下さい。」
夜空は、愛鈴の後ろを着いて行って、屋上までの案内をしてもらった。
「ここが二人の秘密の場所かぁ...... 」
「にしても、よく俺たちがここで食べてるってわかったな。」
「別にわかっては居なかったよ?ただ、昼休みに二人を見かけたことがなかったから、どこか人目につかない所で食べてるのかな?って思っただけだよ。」
だから、ここでいっつも過ごしてることがわかったのか...... 。
「それとさ。ずっと二人に聞きたかったことがあるんだけどさ、二人って付き合ってるの?」
「えっ!」
「お前!急に何言ってんだ。愛鈴と俺が、つ、付き合ってる訳ないだろ。」
「怪しい...... 。だって二人の距離感って、友達同士って言うより、互いを思いやってる恋人みたいなんだもん。」
夜空の感は意外と鋭かった。要は、愛鈴のことを少なからず意識していたし、愛鈴も要のことを気になり始めていた。なので、夜空の感はあながち外れてもいなかった。
「それで、実際のところは付き合ってるの?」
「愛鈴と俺は、そう言う関係じゃ無いよ。愛鈴とは普通の友達だ。」
「ふ〜んまあ、今日のところは、そう言うことにしておいて上げる。」
(そっか、じゃあ二人は付き合ってる訳じゃ無いんだ!。それなら私にも...... )
「でも!愛鈴は要のことどう思ってるの?」
「私は、要くんとは誰よりも深い仲で、この関係を続けたいと思ってます。なので、今はまだこれ以上の関係になる気はありません。」
「まだってことは、いつかはそれ以上になりたいと思ってるってこと?」
「さあ?それは、夜空さんのご想像にお任せしますよ。」
二人の間には、バチバチとした、とてもピリついた空気が漂っていた。
「せっかく弁当を食べに屋上に来たんだ。二人とも落ち着いて、とりあえずお昼にしないか?」
「まあ、それもそうですね。せっかく来たんですから、食べましょうか。」
「二人ともお弁当持って来てるんだ?」
「夜空は弁当作って来て無いのか?」
「私はこれ!」
そう言って夜空が取り出したのは、カロリーメイトだった。
「カロリーメイトか。」
「そう。カロリーメイトは、一本食べるだけでお腹いっぱいになれる魔法の食べ物だよ!。」
「まあ、魔法の食べ物かどうかは別として、夜空がそれで満足になれるなら、それでも良いんじゃ無いか?」
美味しそうに食べてたので、本人がそれで良いと思ってるなら、それはそれで有りなんじゃ無いかと思えた。
「俺たちも、食べようか。」
「そうですね。頂きましょうか。」
そうして、それぞれが昼食を済ませると、夜空が慌てた様子で荷物をまとめた。
「もう、こんな時間!私次の授業理科室に移動しないとだからもう行くね!」
「おう。気をつけて行けよ。」
「あっ!後、愛鈴に言っておこうと思ってだことがあったんだけど。」
「なんですか?」
夜空は愛鈴の近くに言って、要には聞こえない位の小さな声で、囁いた。
「要のことが好きなら早く告白した方が良いよ?じゃ無いと私が要のこと取っちゃうから。」
「なっ!」
「じゃあ私はそろそろ行くね!またね。二人とも!」
「ああ。また明日な!」
二人に手を振った後、夜空は理科室へと走って行った。
「随分忙しいやつだったな。...... 愛鈴、大丈夫か?顔赤いぞ。」
隣を見ると、愛鈴が顔を赤くして、固まっていたので心配になって要が話しかけた。
「...... なんでも、ありません!。私、ちょっとお手洗いに行って来ます。」
そう言うと、愛鈴は慌てた様子で、屋上から飛び出していった。
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