第14話 あの時から、きっと私は......

「もう朝ですか」


アラームで目を覚ました愛鈴は、アラームを止めて、眠たそうに目を擦ると、朝食を食べに下の階のリビングへと、降りて行った。


「おはよう愛鈴」


「おはようございますお母さん」


リビングに降りると、朝食を準備し終えたお母さんが、私が降りてくるのを待っていてくれた。


「今日はこの後朝食を取ったら病院だけど...... 心の準備は大丈夫?」


「大丈夫ですよ...... もう、慣れましたから 。」


今日は病院で、愛鈴の病状が悪くなってないかを確認する検査の日だった。


「じゃあお母さん。車出す準備して待ってるから食べ終わったら車まで来てね?」


「わかりました」


愛鈴は、朝食を急いで済ませると、お母さんが用意してくれていた車へと乗った。


そうして、三十分程。車を走らせていると、愛鈴の通っている病院に着いた。


「着いたわ。愛鈴、気をつけて行ってくるのよ。」


「ご心配、ありがとうございます。ですが、心配は無用です。私なら一人でも大丈夫ですから。」


診察をする時は一人で受けなければならないルールがあるので、お母さんには、審査が終わるまでは車の中で終わるのを待っててもらいます。


中に入ると、診察室でいつも通り検査を受けることになったので、少しばかりの希望を抱いて、検査を受けました。


「これ。今回の結果の報告書ね。結果は...... 」


「前回と、同じですか?」


「...... ええ。でも、きっとこのままいけば」


「お気遣いありがとうございます。ですが、そんなことが起きないって一番わかってるのは、私ですから。」


この病気が、治るかどうかはわ分かりきってます。ですが私は、もう受け入れることを決めましたから...... 。


「立花さん...... 」


「私、先生のところに行かないと行けないので、そろそろ行きますね?」


「では、失礼します。」


診察を終えた愛鈴は、担当の先生に、結果を伝えるように言われていたので、先生の下へと向かった。


「失礼します」


「立花くんか。よく来たね、そこの椅子にでも座りたまえ。」


先生にそう言われ、愛鈴は先生の向かえの椅子へと座った。


「これ、今回の結果の報告書です。」


「今回も変わらず、か。 」


「まあ、わかりきってたことですから。」


「それにしても君、少し明るくなったね?」


「そうですか?」


「以前来た時は、目に一切光が無く、この世界に絶望しきったような目をしてたからね。」


前回来た時は確か、高校一年生の夏ですか.....。


「誰か好きな人でも出来たかい?人に恋心を抱くと、心が明るくなるって言うし。」


愛鈴は、自分が明るくなれたのは、きっと要に出会えたからだと、この時思った。


彼が覚えているかは分かりませんが、初めて私が彼と出会ったのは、高校一年の秋でした。


その時は梅雨が続いていて、大雨が降り続けていました。私は、運悪く傘を家に忘れてしまい、雨が病むのを待ち続けていました。

すると、それを見かねた一人の男の子が私に傘をやると言って来ました。最初は、借りるのが申し訳なくて断っていたのですが、彼が強引に私に傘を渡して、走って行ってしまったので、私は傘を借りることにしました。


次の日。お礼を言おうと思って、その子のことを調べると、なんと彼が学年で噂されてる、朝月要くんでした。私は噂されてるような人と違い過ぎて驚きましたが、とりあえずお礼を言おうと近づきました。ですが、随分と辛そうな表情をしていた彼を見て、気がつくとお礼とはかけ離れたことを話していました。


そこからは、互いに関わることがありませんでしたが、今年の三月ごろにそれは起こりました。


私が他校の男子生徒に絡まれて、困っていた時に、誰かが助けてくれました。

誰かと思い、そっちを向くと、助けに来てくれた生徒は、なんとあの時の彼でした。


私はそれに気づいた瞬間。胸の高鳴りが抑えられなくて、彼をずっと見つめていました。

今思えば、私はこの時。すでに彼に夢中になっていたのかも知れません。


それをきっかけに私は彼と友人同士の関係になりました。友達になってからは色んなものが見えてくるようになりました。


少し負けず嫌いなところや、自分のことよりも周りを優先してくれる所。そんな彼の魅力に気づくたびに、私は彼に惹かれていきました。


そして、この前遊園地に連れて行ってもらった時に、私は彼に全てを打ち明けました。すると彼は私にこう言いました。『これまでの人生、辛い思いをしたんだから、これからの人生は楽しい思いをしよう』とそして、『必ず私の夢を叶えてやる』と言ってくれました。


私は、この時思いました。『ああ。きっと私は彼のことが好きなんだろうなって』。なので私が誰かに好意を抱いて明るくなったんだとすれば、それは間違いなく、要くんのおかげだと思いました。


「ええ。初めて好きだと思える人に出会えましたから。その人に私はきっと夢中なんだと思います。」


「それはよかった、君の命はどんなに長くても後一年で終わりを迎える、それまでの時間は思い残す事が無いように、過ごした方がいい」


「ええ、わかってます。」


私の寿命は、どれだけ長くても後一年しか持ちませんでした。

だから、私には時間があまりありません。なので悔いが残らないよう。私は、今年中に彼に告白しようとこの前から、覚悟を決めていました。


「じゃあ。今日の診断はもう問題ないから、今日はもう帰っていいよ」


「わかりました。では、失礼いたします。」


愛鈴は、扉を閉めた後、病院の外で待っててくれてる、お母さんの車に乗り、家へと帰宅した。











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