第10話 この思い出は永遠に...... ③
「おっ!。愛鈴、あそこにお化け屋敷あるぞ?入ってみるか?」
「本当ですか!。是非行ってみたいです!」
愛鈴が先程、お化け屋敷に行ってみたいと言っていたので、二人は、お化け屋敷の中へと入っていった。
「お化け屋敷って、そういえば俺も入るの初めてなんだよな...... 。」
「愛鈴って幽霊とかは信じるのか?」
「.................. 」
愛鈴は怯えた様子で、身を縮めて、明らかに普段よりもゆっくりと歩いていた。
「愛鈴!」
「ひゃい!なんですか!」
「もしかして、怖いのか?」
「そんな訳ないじゃないですか?こんな子供騙しに、私が怖がるなんて、断じてあり得ません。」
「でも、さっき名前呼んだら、驚いて声裏返ってたし...... 本当は怖いんじゃないのか?」
今の愛鈴は、普段のどんなことでも完璧にこなして、苦手なものなんて何一つないんじゃないかと思うような、そんな愛鈴の面影は微塵も残ってはいなかった。
「あれは、その...... そう!声の調子が悪かったので、高音を出せるか試してたんです!」
「愛鈴、さっき俺のこと子供っぽくて可愛いって言ったが、今の愛鈴の方がよっぽど子供っぽいぞ?」
「なっ!。私が子供っぽいだなんて...... そんな訳は........... 」
愛鈴が話していると、どうやらお化け屋敷のギミックが発動したようで、上から煙のようなものがぶわぶわと、勢いよく降ってきて愛鈴へとかかった。
「きゃっ!」
愛鈴は、驚いた拍子に、近くにいた自分の腕へと抱きついた。
愛鈴の顔が、自分の顔のすぐ近くにあり、少しでも動けば顔がぶつかってしまいそうだったので、二人は互いに動くことができず、見つめ合うことしか出来ずにいた。
その見た目あってる時間に耐えられなくなった愛鈴が、ゆっくりと腕を話して、要から少し離れた。
「すみません!つい驚いてしまって...... 」
「そう、か。まあ、気にするな...... 」
愛鈴は、自分がお化けに怖がって要の手を掴んだことが。そして、要は愛鈴と目を合わせ続けたことが恥ずかしくて、二人とも相手の目を見れずにいた。
「なあ愛鈴。そんなに怖いのが苦手なら、俺と手でも繋ぐか?」
「でも、よろしいのですか?」
「何がだ?」
「その、私と手を繋いで歩くの、迷惑じゃありませんか?」
「迷惑な訳ないだろ?と言うか、それが迷惑ならジェットコースターが怖くて手を繋いでもらってた俺は一体なんなんだよ。」
「ふふっ。要くんは優しいですね。わかりました、では手をお貸し頂いてもよろしいでしょうか?」
「喜んで。」
要は、愛鈴の手を繋ぐと、愛鈴にペースを合わせながら、ゆっくりとお化け屋敷の中を進んで行った。
「愛鈴は、心霊系の怖いものが苦手なんだな?」
「昔から、幽霊だけはどうしても駄目なんですよ。」
「なんか、愛鈴にも苦手なものがあって、安心した。」
「安心ですか?」
「愛鈴って、俺の中のイメージではなんでも出来る天才で、出来ないことなんて何にもない完璧超人だったから、こう言う弱い一面も知って、愛鈴だって一人の可愛いらしい普通の女の子なんだなって思えたから、安心した。」
愛鈴の苦手なことが、幽霊だったのは意外だったが、愛鈴の弱いところを知ることができて、要は愛鈴にも、苦手なことはあるのだと、心の底から安堵していた。
「要くんは、何をやっても完璧な私と、苦手なことも得意なこともある、完璧ではない私。どちらの方が好きですか?」
「俺は、どっちの愛鈴も好きだけど、愛鈴が求めてるのはそう言うことじゃないよな。...... 俺が好きなのは、多分後者の方だと思う。」
「理由を聞いてもよろしいですか?」
「理由なら、沢山あるが、一番の理由は、今話してる愛鈴が後者だからかな。」
確かに、クラスのみんなが知ってる。完璧で何も間違わない愛鈴も悪くはないと思うが、少なくとも自分は、教室では見せないような弱い姿の愛鈴に惹かれていって、好きになった。だから、きっと俺が好きなのは...... 。
「俺の今まで見て来た愛鈴は、不器用ながらも必死に見栄を張って、周りに負けないよう頑張ってる普通の女の子だ。少なくとも、俺が好きになったのはそんな女の子だ。だから、俺は後者の方が好きだと思う。どうだ?納得出来る理由だったか?」
「ええ。貴方らしい素敵な答えでした。今の要くんの言葉は、生涯忘れることは無いと思いますよ?」
「それは良かった。」
「少し暗い話をしてしまいましたね。気を取り直して、先に進みましょうか。」
心にかかったもやが取れたかのように、スッキリしたような笑顔で、愛鈴は、先程よりも軽くなった足で、先へと進んだ。
二人はその後、数々の仕掛けに苦戦しながらも、ついに最後の仕掛けに辿り着いた。
「これ、本当に私がやらなきゃ駄目ですか?」
「ここに来たがってたのは愛鈴だろ?それに、人形と握手するだけだから、そんなに怖がらなくても大丈夫だ。」
最後の仕掛けは人形と握手をすることだった。
どうやら、握手をしないと出られない仕掛けになってるらしい。
「わかり、ました。要くん...... 絶対に手離さないで下さいね!」
「ああ。」
「では、行きます!」
「お!、扉開いたみたいだぞ」
愛鈴が怯えながら、人形と握手を交わすと閉まっていた扉がガチャリと開いた。
「開きました!早くここから出ましょう!」
「ああ。」
愛鈴の手に引っ張られながら要は、扉の外へと出ていった。
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