アリのぼうけん地図

霜月あかり

アリのぼうけん地図

ある夏の日。

小さなアリの クロ が、地面の上でひらひらと動く大きな紙を見つけました。


「なんだろう?」


仲間の アカ と シロ も集まってきます。

広げてみると、それは人間の落とした地図でした。


「わあっ! 見たこともない道がいっぱいだ!」

クロの目はキラキラ。


アカは少し心配そうに言いました。

「でも、こんなに広いところ、ぼくらに歩けるのかな……」


「大丈夫! どんなに広くても、一歩ずつ進めばいいんだ」

クロは胸を張りました。


* * *


三匹は地図を見ながら庭の探検を始めました。


一本の棒が地図の「大きな橋」に見えたり、

水たまりが「青い湖」に見えたり。


シロはおもしろそうに笑いました。

「ほんとうは小さな庭なのに、ぼくらには大冒険だね!」


ところが――

突然、強い風が吹いてきて、地図がふわりと宙に舞い上がりました。


「たいへん! 宝の地図が飛んでっちゃう!」

クロが叫びます。


三匹は力いっぱい追いかけました。

アカが前へ走り、シロが紙の端にしがみつき、クロがみんなを引っぱります。


「ううっ、もう少しだ!」


やっとのことで風がやみ、三匹は地図を取り戻しました。

みんな汗びっしょり。でも顔はにこにこです。


「ほらね。協力すれば、なんだってできるんだ」

クロの言葉に、アカもシロもうなずきました。


* * *


やがて夕日が沈むころ。

アリたちはひときわ高い草の上にのぼりました。


そこから見えた景色は――

本当に地図の上に描かれている“広い世界”のようでした。


「いつか、あっちの世界まで行けるかな」

クロがつぶやきます。


アカは少し考えてから答えました。

「行けるよ。だって、今日だってこんなに遠くまで来られたんだから」


三匹はうなずき合い、

夕日に照らされた地図を大事に抱えて、巣へと帰っていきました。


その地図は今も、アリたちの“宝物”として大切にしまわれています。

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アリのぼうけん地図 霜月あかり @shimozuki_akari1121

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