番外編「図書館へ行こう」

書籍発売記念でこちらに投稿しなおしました

ありがとうございます!



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 シロイはファビーとの約束を守るため図書館に来ていた。

 気になっていた「生き物を連れて入れるかどうか」についてはあっさり解決した。

「幻獣でしたら問題ありません。何かあれば逆召喚できますからね」

 受付も兼ねた司書の言葉に、シロイは神妙な顔で「はい」と答えた。

 図書館に入る際は保証金を預ける。帰りに返却してもらえるので、そのための割り符をもらう。

 図書館は内部も荘厳だった。受付が閲覧室との境になっており、行き来するには門を通る必要がある。この門も意匠が凝っていた。

「飾り彫りが綺麗だね。真ん中は聖竜かな」

(端にあるのは精霊王でしょうか。想像で作った割には、なかなかどうして本質を捉えていますよ)

 などと話しながら書架の間を歩いていく。師匠の家にある図書室と似ているようで似ていない。

「こっちの方が明るいね。それに足音がしない。吸音の魔道具かなぁ」

(まさか。絨毯や下地材で工夫しているのでしょう。魔術の痕跡は感じられません)

 シロイは師匠を基準に考えてしまうが、今の時代は古代よりも技術が退化している。そうなるように師匠が調整した。その差についてもシロイは知りたかった。

 だから今の時代の本で勉強しようと、目に付いた気になる本をテーブルに置く。

 ファビーも読みたい本があるらしい。そもそも彼のお願いで図書館に来ていた。

魔法に関してはシロイに任せて、ファビー自身は(恋愛小説を読みましょうかね)と趣味で本を選んだ。

 シロイは内容が気になったものの、自分で勉強すると宣言してしまった手前、聞けない。

 なんとか集中して魔法の歴史についてや今の時代の考え方を学んだ。


 空腹で昼だと気付き、図書館に併設されたカフェに行く。ここは本を持ち込んでもいいが汚せば保証金で立て替えとなる。シロイとファビーは本を一旦戻してから食事を摂った。

「ファビーの本は面白かった?」

(ええ。常識も学べます)

「じゃあ、わたしも読もうかな」

(シロイには早いです)

「もう、そればっかり」

(ほとんどが貴族の恋愛話です。貴族の常識を学ぶにはいいでしょうが、今のシロイには早くありませんか)

「あ、それはそうだね」

 シロイはしょんぼりと尻尾を垂れさせ、残っていたサンドイッチを平らげた。少々お高い店だが味はいい。何より本を読んだあとに感想を言い合えるのがよかった。

 図書館ではあまり喋られないが、カフェでなら存分に語れる。

「魔法の技術は退化してるけど、簡単な魔法陣を工夫して使っているところがいいなって思ったよ。足りないところを補う考え方は、わたしの勉強にも役立つよね?」

(ええ。シロイも実りのある時間だったようですね)

 シロイは笑顔で頷いた。嬉しくなって、つい声が大きくなる。

「でも、一般的な常識も知りたいなぁ。今はヴィルフリートと冒険者、商業ギルドからしか学べてないもんね」

 うーんと考えていると、食事を終えた司書が通りすがりに「ちょっといいかしら」と声を掛けてきた。

「新聞を読んでごらんなさい。王都だけでなく、国全体に関する情報が書いてあるわ。三日に一度の間隔で発行されているの。六日遅れでも構わないのであれば、図書館に置いてある分なら無料で読めるわよ。受付のすぐ裏に並べてあるわ」

「あ、わ、はい。あの、ありがとう!」

 彼女は微笑むと、颯爽と職場に戻っていった。

「……かっこいいね」

(ええ。あのような方々を見て学ぶのも勉強になるでしょう)

「うん」

 最初はびくびくしていたけれど王都に来て半年、シロイは人に慣れてきた。今も滑らかに話せたとは言い難いが、初対面にしては応じられた方だ。自分でも成長したと感じる。

 シロイはふふっと笑うと、ファビーを抱き締めて書架に戻った。








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11/28発売

モフっと少女の人生リスタート~長い眠りから目覚めた白猫獣人は、伝説級アイテムを作って今度こそ自由な人生を切り拓く~

ISBN-13 : 978-4813795346

イラスト:桧野ひなこ先生

書き下ろしアリ


よろしくお願いいたします💕



同時期に別作品の「魔法使いと愉快な仲間たち 6巻」も出ます

もしよろしければ、まほゆか⑥もお手にとっていただけますと幸いです





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モフっと少女の人生リスタート~白猫獣人のアイテム師は異世界に転生したい~ 小鳥屋エム @m_kotoriya

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