第37話 プロ初出場
四月。開幕して間もなく、俺と勇気は東京レイダースの一軍ベンチに名を連ねていた。
高校時代から共に戦った仲間が、今も同じチームでユニフォームを着ている。それが、心強くて仕方なかった。
初出場の機会はすぐに巡ってきた。
八回裏二死一塁、代打で俺の名がコールされる。スタンドがどよめき、胸が熱くなる。
相手はベテランの左腕。初球の直球に思わず手が出る。
「カキィン!」
詰まった打球はセカンドゴロ。アウト。悔しさで喉が焼けた。
だが観客は大きな拍手を送ってくれる。これが、プロの舞台――ここからがスタートだ。
続く回、勇気が代走でグラウンドに飛び出す。
スタンドがざわめく。プロでも俊足は最大の武器だ。
牽制を何度も受けたが、勇気は構わずリードを広げた。そしてモーションに入った瞬間、一気に二塁へ。
「セーフ!」
プロ初盗塁成功。観客の歓声が響く。
その後の打席で返されることはなかったが、勇気は誇らしげに胸を張っていた。
「太陽、俺たちはまだ通用する」
俺は頷いた。
「でも、ここで満足したら終わりだ」
一方その頃――福岡ホークスターズの和哉は、堂々と開幕ローテに入っていた。
デビュー戦で投じた152キロの直球に、捕手のミットが悲鳴を上げる。七回無失点、プロ初勝利。新聞の一面は「怪物ルーキー・和哉」の文字で埋め尽くされた。
寮に戻った夜。テレビで和哉の快投を見ながら、俺と勇気は黙っていた。
「やっぱり、あいつは別格だな……」
勇気がつぶやく。
「でも、ここで戦えるんだ。必ず追いつく。そして打ち砕く」
俺はバットを握り直した。
甲子園を越えて、次の舞台はプロ野球。
再び三人の物語が交わる日は、そう遠くない。
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