第28話 高校3年春大会



 二年夏に甲子園ベスト4へ進出した俺たちは、冬を越えて確実に強くなっていた。

 朝は坂道ダッシュ、昼はノックと打撃、夜は筋力と自主練。練習は単なるルーティンではなく、「あと二勝、全国制覇へ届くため」の鍛錬だった。


 勇気は打撃に磨きをかけ、バントや流し打ちも習得。出塁率が飛躍的に伸びた。

 俺は木製バットでの特訓を続け、芯で捉える確率を高めた。守備面でも、どんな送球でも止められるファーストを目指した。

 後輩の斎藤や田島も成長し、チームは「完成形」に近づいていた。


 迎えた春大会。

 初戦から快勝を重ね、準決勝では勇気が2安打3盗塁、俺が決勝打を放ち、見事に勝ち切った。

 だが決勝戦は違った。

 相手投手は緩急自在の技巧派。序盤に先制したものの、中盤から沈黙。六回に追いつかれ、八回に逆転。

 九回、二死一・二塁で俺に打席が回ったが、打ち上げた打球はライトフライ。

 スコア2―3。俺たちは準優勝に終わった。


「また勝ち切れなかったな……」勇気が悔しげに唇を噛む。

「いや、夏に勝つための課題が見えたんだ」

 俺は自分に言い聞かせた。優勝だけを狙う夏が、すぐそこに迫っている。


 一方その頃、和哉の高校は春の選抜甲子園に出場していた。

 エースナンバーを背負った和哉は、初戦で完封勝利。148キロの直球と落差のあるフォークで相手打線を圧倒した。

 二回戦も1失点完投勝利。全国の舞台でも「和哉の速球は別格」と評され始めた。


 だが準決勝、強打の関西王者を相手に七回で3失点。打線も援護できず、1―3で敗退。

 マウンドで試合終了を迎えた和哉は悔しさを噛みしめながらも、堂々と引き上げていった。


 インタビューで彼は短く答えていた。

 「夏こそ、優勝します」


 俺たちは春準優勝、和哉は春ベスト4。

 互いに全国の舞台で爪痕を残しつつも、まだ頂点には届かない。


 ――だからこそ、最後の夏は絶対に決着をつける。

 太陽、勇気、和哉。三人の道は、再び一つの場所へ収束していく。

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