第27話 秋大会・冬の追い込み


二年の夏が終わり、俺たちのチームは甲子園ベスト4で敗退した。


全国の舞台で通用したという自信と、決勝に届かなかった悔しさ。その両方が胸の奥に渦巻いていた。


三年生が引退し、いよいよ俺と勇気が中心となる新チームが動き出した。


秋季大会。


全国ベスト4の肩書きは注目を集め、どの相手も徹底的に研究して挑んできた。


序盤は勝ち進んだが、準決勝でまさかの逆転負け。俺も勇気も結果を残せず、スタンドからはため息が漏れた。


「まだ、全国の頂点に立つには足りない」


監督の言葉は重く、俺たちを突き刺した。


その夜、グラウンドに残った俺と勇気は黙々と素振りとランニングを繰り返した。バットを振る音、土を蹴る音だけが夜の校庭に響いていた。


冬。


朝は坂道ダッシュ、昼は基礎練習、夜は筋力トレーニング。雪が舞う日でも走り込みを止めることはなかった。


「太陽、俺は誰にも止められないランナーになる」


勇気はそう言い、倒れ込むまで走った。


俺はファースト守備を徹底的に鍛え直した。捕球、送球、声掛け。どんな場面でも内野陣を支えられる選手になるために。


打撃でも木製バットでの練習を続け、球を芯で捉える感覚を体に刻み込んだ。


新しい仲間も現れた。


一年生左腕の斎藤。伸びやかなフォームから投げ込む速球は、まだ荒いが確かな伸びを感じさせる。


捕手の田島は強肩と冷静なリードで勇気の盗塁練習を受け止め、チームの柱になりつつあった。


「田島がいれば、俺たちはもっと強くなる」


心からそう思った。


夜の寮。勇気と俺は練習ノートを広げ、数字を記録する。


「盗塁練習、今日は10回中8回成功」


「打撃、インコース対応強化中。木製で100本スイング」


お互いに修正点を言い合い、妥協はなかった。


「太陽、俺たちは凡才だ」


「だからこそ、人の何倍もやるんだ。和哉に追いつくためにな」


和哉。あのライバルの姿が、常に練習の先にあった。


――必ず、決勝で会う。そのために俺たちは冬を越える。


吐く息が白く染まる冬の夜。


グラウンドに響くのは、バットが風を切る音とスパイクが土を蹴る音だけ。


俺と勇気の挑戦は、ここからさらに熱を帯びていった。

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