第7話「光の庭のささやき」

まばゆい光に包まれて、ちびっこたんけんたいが目を開けると――そこは「光の庭」だった。


草花は虹色に輝き、泉の水面には星のような光の粒が浮かんでいる。風がそよぐたび、庭じゅうにやさしい音がひろがった。


「うわぁ……」ミミが思わず声をあげる。

けれど、その美しさの奥に、なにかを試すような気配が潜んでいた。


庭の中央には、水晶のように透きとおった大きな樹。幹には古い文字が刻まれている。


《勇気ある者、真実を選びとれ》


リクは息をのみ、仲間を見回した。

「また試練だ。ここを突破できなきゃ、島の秘密に近づけないんだな。」


その瞬間、樹の枝から光が舞い落ち、庭の奥に三つの扉が出現した。

ひとつは「まぶしい金色の扉」。

ひとつは「深い影をまとった黒い扉」。

そして、もうひとつは「透明で、向こうがゆらめいて見える扉」。


「どれかひとつが正しいんだろうけど……」カイが腕を組む。

「どれも怪しいよ……」ミミは眉をひそめた。



まず、ポコが羽ばたいて上空から見下ろした。

「金色の扉の前には足跡がいっぱい! みんなそこに行きたがったみたい。でも……道が途中で消えてる!」


「じゃあ、金色は罠だな」リクが低くつぶやく。


次に黒い扉の前に立つと、ひやりと冷たい風が吹きつけ、ググがぶるっと震えた。

「なんだか……吸いこまれそうだよ」

リクが手をかざすと、扉のすき間から黒い霧がもれてくる。


そのとき――。

「でも、こっちの方が早道かもしれないよ!」ミミが勢いでノブに手をかけてしまった。


「だめだ、ミミ!」リクが叫ぶ。

次の瞬間、黒い霧が渦を巻いてミミを包み込みそうになった。


「うわっ!」

あわててググが足元を掘り返し、土を舞いあげて霧をはね返す。

さらにポコが羽ばたいて風を送り、ミミを引き戻した。


「……あ、あぶなかったぁ」ミミはへなへなとその場に座りこんだ。

「ひとりで決めちゃだめだ。みんなで考えよう」リクが真剣な目で言う。

ミミは真っ赤になって、「ごめん……」とうつむいた。



残るは透明な扉。けれど、中はゆらゆら揺れて、はっきりとは見えない。


「どうやって確かめればいいんだろう……」カイが考え込む。


そこで彼はリュックから小さな鏡を取り出した。

「太陽の光を反射させれば、何か分かるかもしれない!」


泉の水面に扉を映し、光を当ててみる。すると――透明な扉だけ、ほのかな光を返した。まるで「ここが真実だ」とささやいているかのように。


「やっぱり!」カイが目を輝かせる。

リクは大きくうなずいた。

「ポコとググがミミを助けてくれたおかげで気づけたんだ。みんなでここを選ぼう!」


「そうだよ!」ミミも元気を取り戻して胸を張る。「だって、わたしたちはちびっこたんけんたいだもん!」

ググも力いっぱい頷き、ポコは高らかに羽を広げた。



リクが透明な扉に手をかけると、柔らかな風が庭じゅうを駆け抜けた。

扉の奥からは、これまで以上に広大でふしぎな気配がただよってくる。


「行こう、みんな!」

三人と二匹は顔を見合わせ、力強くうなずいた。


そして、透明な扉のむこうへと歩みを進めた――。

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