第1話
特別って、何だ。
小学生のころの僕――
「湊は、特別になりたいの?」
家の前の狭い公園。ブランコに腰かけて、となりで聞いたのは幼馴染の女の子――星名(ほしな)ほのかだ。髪はいつも半分だけ結んで、笑うと犬歯がのぞく。
「なる。絶対なる」
「なんで?」
「だって、ふつうのままじゃ誰にも見つけてもらえないから」
言ってから、自分でも少し怖くなった。ほのかは目をぱちぱちさせて、それから唐突に立ち上がった。
「わかった。じゃあ、わたしが先に特別になってくる。湊が見つけられるくらい、でっかく」
「いや、ちが――」
ちがう。僕がなりたいんだ。僕だけが。
でも、ほのかは本当にそのまま走り出した。子どもが口走った願いを、彼女だけが本気で拾い上げた。
それから数年、彼女は星になった。
スターの「星」に、名を持つ子は、その名の通りに。
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